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第14章:愛情不足の代償

2話

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「そりゃ、コンクールで歌えるってなったら嬉しいけれど、ちょっとそんな単純な話じゃなくて……」
 要は言う。この学校の中では唯一と言っていい強豪に入るであろう合唱部には、外部からプロのボイストレーナーが来ていて生徒たちを指導している。そのおかげもあって、合唱部は何年も高レベルを維持してはいるが、全国大会への切符はまだつかめていない。まぁ、いいコーチがついたくらいで全国に行ければ苦労はしないので、強豪とは言えど現実はそんなものである。
 とはいえ、一応は強豪校ということもあり部員はかなり多く、レギュラーとしてコンクールに出場出来るのは数多くの部員のうち3人に1人ほど。32名まではエントリーできる決まりではあるが、要求されるレベルに満たなければ枠が余っていても参加させてはお貰えない。
 部員は皆、青春時代に思い出を残そうと必死で凌ぎを削りあっているため、ちょっとやそっとの努力では人前で歌うことすら敵わないのである。だから、明日香の言う通り、要がコーチに誘われたのであれば、是非とも出場するべきだ……というのは当然の考えだが……
「コーチは、『俺の家で特別レッスンを受けるならレギュラーになれるぞ』って……言ってきたのよ」
 要は簡潔に言ってため息をつく。
「その、小島春斗ってコーチはさ。音大を出てて、歌唱力はマジで高いの。教えることに関してはすごくまじめだし……歌声だけなら惚れるよ。でも、女子に対して露骨にボディタッチが多くって、不快なの。男子はどうなのかって聞いてみたところ、触られたことは全然ないって……女生徒はほぼ全員触られてる感じなのにさ」
「そんなセクハラコーチが特別レッスンってそれ、なんというかもう、アレね。怪しさ満点ね……っていうか、まさかそのコーチ、女子高生を自宅に誘い込んで強制わいせつでもする気なんじゃ……」
「こういう場合も強制わいせつっていうのかな? まぁ、そんなことはどうでも良くて……」
「どうでもよくないってそれ、絶対断りなさいよそれ絶対! そんなのにホイホイついていったら、青春時代が買春時代になるから絶対にやめときなさいマジで」
「本宮さん、別に上手いことを言ってほしかったわけじゃなくって……っていうか、私はもともと、断るつもりだから安心して。だからどうでもいいの」
「はぁ……それならいいけれど……」
 そう言いながら、明日香は要のことを見る。そして、彼女と以前話した何かを思い出してはっとした。
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