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第14章:愛情不足の代償
1話:相撲部ってどんなところ?
しおりを挟む夏休みが終わり、暦の上では夏も終わっている今日この頃だが、暑さは全く和らぐことなく、寝るときはクーラーが手放せない……そんなとある平日の昼休み。
「ねえ、本宮さん、相撲部ってどんなところなの?」
同じクラスの子に、唐突に話題を振られた明日香は首を傾げた。
「どんなって……うーん、どう答えればいいのかはわからないんだけれど、あまり大会とかに向けてバチバチ鍛えてる感じの部活じゃないけれど……うん、なんでそんなことを聞いたの? どんなところと聞かれても、何を聞きたいかによって答えはいくらでも……」
明日香は同級生の友達、白石 要から質問を受け、戸惑いながらもそう答える。
「あぁ、ごめん。なんというか、もう全部聞きたいんだよね。活動内容とか、雰囲気とか……」
「そりゃ、活動内容は前も言った通りに基礎稽古の他、私が色々技を教えたりとか……あと、ちゃんこ鍋代わりにみんなで料理を作ったりとか。うち、相撲部だからちゃんこ鍋ばっかり作るわけじゃなく、普通に牛丼とかカレーライスとか親子丼とか作るんだよね。あと、地域の人助けとして、清掃活動とかをしてるけれど……さっきも言った通り、相撲を極めるとかそういう感じの熱意のある部活じゃなく、相撲を通して健全かつ健やかに生き、日々に感謝するとかそういう感じの部活よ? 競技としての相撲よりも、神事としての相撲に重きを置いているの」
「……そうだよね。それならいいよね」
要はため息交じりにそう言って項垂れる。
「どしたの、何かあったの?」
少し含みのある態度が気になり、明日香は要に質問を返す。この態度で何の問題もないということはさすがにないだろう。
「……ウチの合唱部さ、この学校の中では割と強い分類に入る部活なんだよね」
「確かに、以前は全国コンクールにも行っていたそうだけれど……それが? 今は県大会どまりで全国まではいけてないよね?」
「私ね、合唱コーチ……顧問の先生じゃなくて、外部顧問のコーチに、レギュラーにならないかって誘われたの。小島 春斗っていう人なんだけれど」
「いいじゃん。レギュラーになったらコンクールで歌えるんでしょ? やったら? 要さん歌上手いんだし」
この学校は大抵、特に経験のない教師が部活の顧問を任される。相撲部の有田大河もその一人ではあるが、例外もあった。
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