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第13章:お祭りの日

23話

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『明治時代、産業革命も起こり、世界全体が少しずつ豊かになり、人口も増えていく中で、人の量が増えた。私達は人の感情を食べることで生きる存在……で、あれば人の数が増えるということは、それ即ち食糧が増えることと同義。例えば、鶏そのものを食べたり、卵を産ませるために無茶な飼育をしなければ生きられなかった時代は終わり、鶏を養鶏場に閉じ込めずとも、自然に産む無精卵を食べるだけで、私たち妖怪のたぐい、神のたぐいは生きられるようになった。それは、人間を害さずとも、奇跡を起こさずとも生きられる世界になったということ。そして、私達は人間が少ないころは人間を害しながら生きていたから、人間の味方をしている神のたぐいとは敵対関係にあったのだけれど……人間を害さずに生きられるのであれば、敵対することもない……というのが、タケミカヅチの立場だったわけ。
 ……情欲を掻き立てる力というのは、使い方を間違えれば男性が女性をレイプすることにつながる。浮気や不倫といった問題につながる。無計画に家族を増やし、結果的に群れを維持できなくなるという問題につながる。この前も、妊娠した女性の父親捜しをしたから、わかるでしょ? 後は性病の危険とかもあるし、風俗通いで破産するとか、……私達が持つ性欲を掻き立てる力とは、そういうリスクもはらむ力というわけ。七つの大罪に色欲が入っている理由ね。
 でも、今の時代は……いや、明治時代のころからすでに、レイプや性病のリスクを人間に犯させてまで、私達が人間の感情に貪欲になる必要はない。人がたくさんいるんだから、どこかの誰かがセックスしたら、気まぐれにそれを食べればいい。私達はそういう生き方に変わっていったの』
「……逆に言えば昔は、お前らも悪さしてたってことか?」
『まぁ、お察しの通りよ。この神社では、明治時代になるまで男女をたくさん集めてセックスするっていうやばーいお祭りがあったんだけれど、それ完全に私達のせいなんだよね……セックスすることで山の怒りを鎮めるっていうお祭り……人間の夢に出て、「セックスしろ、たくさんセックスしろ……」って夢の中で沢山話しかけて……』
「やべえなそりゃ。どこかのエロ漫画かAVの企画じゃねえか」
『裕也ったら18歳になってないのにそういうの見ちゃだめよ、悪い子ね……』
「同級生に聞いても守ってるやつなんていねえよ」
 女子もいる前だというのに、はばかることなく裕也は言う。素華は『そうでしょうね』という顔だが、真由美は少し顔を赤らめている。
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