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第13章:お祭りの日

20話

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「あ、角があるのはちょっと……角が、ちょっと立派すぎます。やっぱり鹿も女の子のほうが顔が可愛いんだよね……」
『しょぼーん……』
『あぁ、振々……落ち込まないで』
 夫婦漫才のような雰囲気で二柱が話す様子を、真由美はどういった感情で見ればいいのかわからなかった。
「でも、守護霊っていいいなぁ……そういえば、裕也さんも明日香さんも異様に勘がいい時があるけれど、もしかしてそれって、守護霊のおかげだったんですか?」
「そうだよ。カツアゲとか、喧嘩とかそういうのを探知するのは振々や古々のおかげ。二人は人間の感情に敏感だから、困ってる人や怒ってる人、怖がってる人なんかをを探すことができるの。及川さん……あなたがいじめを受けている時も、そうやって見つけたの」
「へぇ……私、古々さんに助けてもらったんですね……」
 明日香がそう告げると、素華はますます目を輝かせて古々と振々に熱っぽい視線を向けた。
『いや、そうだけれど……私は大したことはしてないからね?』
 別に明日香が、『見つけたのは古々だ』と断言したわけでもないのに、古々がやったと確信する素華の言動に古々は引いている。
「なるほど、本宮先輩も裕也先輩も悪人をめちゃくちゃ捕まえてますけれど、そういうのを感知してたからできるんですね」
 真由美は感心した様子で古々と振々を見る。
「言っておくけれど、見つけるのは出来ても対処は私自身の力が必要だからね? 荒事にはほいほい首を突っ込んじゃダメよ?」
「そりゃまぁ、あんまりにも暴力的な人間と関わるのは怖いですからねぇ……私は本宮先輩みたく強くないですから、気をつけます!」
 真由美は苦笑して自分の腕を見る。少しは鍛えたつもりだが、それでもまだまだ細腕だ。男子顔負けの筋肉を持つ明日香には一年や二年では到底届かないだろう。昨日は男に真っ向から反抗してやったが、それも近くに頼りになる人間がいたからだ。庄司さんに明日香、裕也先輩がいるとわかっていれば、相手がいきなり武器を持って殴り掛かってくるでもなければ仇は売ってくれるだろうと信じていたからできたこと。人気のない場所で、たった一人であの男と向き合うとなったらさすがにごめん被る。
「それにしても古々さんかわいいですね……巫女服似合ってます。他の服は着るんですか? メイド服とか」
「いや、メイド服はコスプレの王道だからってそれは見たことねえな……」
 素華はまだまだ目をキラキラさせながら古々に質問攻めをする。古々だけじゃなく、裕也まで困惑し始めている。
『あら、神社の外では色んな服に着替えているけれど、メイド服はまだねぇ』
「こいつ、プライベートじゃ蛇の尻尾とか、コウモリの翼とかを身にまとって、黒いドレスで身を包んで悪魔みたいな見た目になるんだぜ」
「へー……なんか、振々さんや古々さんもフルフルみたいですね。ソロモン72柱の」
 裕也がプライベートの古々の姿を説明すると、素華がそんなことを言う。
「フルフル? 何それ?」
 裕也が素華に尋ねてみたが、ふと目を横にやれば何だか古々の様子がおかしかった。何故だか硬直して、目をそらしている。
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