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第13章:お祭りの日
17話
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「二人とも怖いもの知らずね」
二人の回答に満足して百合根は頷いた。
「さて、お祭りのゴミ掃除も済んだところで、楽しいお祭りに戻りましょう。由香利ちゃん待たせちゃってるし。長く話し込んじゃって、由香利ちゃんも心配してるかもしれないし」
「そういえば、私も素華ちゃんをずっと待たせたままだった……あ、すみません、百合根さん。由香利の世話を押し付けちゃって」
「いいのよ。由香利ちゃんはかわいいし、とってもいい子だから、私もお世話楽しんでいるし。それに、私って一人っ子でしょ? 丁度弟がいなくなって甘やかす相手がいなかったから、妹が出来たみたいで嬉しいのよ」
何故だか、百合根は真由美の妹、由香利と仲がいい。真由美が山奥の作業所へと働きに行ってからというもの、何かと関わっているおかげかすっかり友達のような関係になったようだ。百合根には兄弟姉妹がいないから、ついつい甘やかす相手が欲しかったのかもしれない。
「弟がいなくなった……っていうと、もしかして裕也さん、木村さんの弟扱いだったんですか?」
「まぁ、そんな感じ……服、今まで庄司さんのおさがりばっかり着ていたけれど……百合根が色んな服屋に連れてって買ってくれたし……」
「服屋って言い方がすでに、ファッションに疎い感じの片鱗が見えているから、なんとなく連れていきたくなる理由がわかります」
「な、なんだよそれ!? 服屋は服屋だろ!?」
「あ、アパレルショップとかって言いましょうよ……」
「えー……」
真由美は苦笑しながらアドバイスをするが、裕也は納得しなかった。服は服屋で十分だろう、と。さて、そんな雑談をしながら素華の元に戻る間、真由美はせっかく二人きりなのだから、とそわそわしていた。手を繋いだりとか、そういうことをしてみたいのだけれどきっかけがつかめず……そんな時に見かけた看板に真由美は目を惹かれる。
「ねぇ、裕也先輩……あそこの射的、カップルだと安くなるそうですよ。手を繋いで一緒にお店に行きませんか?」
百合根がいなくなり、二人きりとなった真由美は、射的を理由にカップルのふりをしようとする。
「なんかほしいものでもあるのか?」
「ありますよー! あれです、あの白い頭巾をかぶった黒いウサギ!」
真由美はアルカリオのぬいぐるみ、シロミちゃんを指し示して笑う。あんなもの、本当はどこでも売っているようなものなのだけれど、一瞬でもカップルのふりをするために真由美は言い訳にさせてもらった。カップルだと1回3発300円が、2回で6発500円となる。
挑戦してみると、案外簡単なもので、真由美は1回目の2発目で難なくぬいぐるみが取れてしまった。500円を払ってしまった以上もったいないので、シロミちゃんとはライバル関係にあるマイメモリィのぬいぐるみを狙う。残った1発では取れず……裕也の挑戦で何とかそれを取ることが出来た。そうしてぬいぐるみをペアで持ち歩くことになった裕也と真由美は、はた目には恋人に見える状態になるのであった。
二人の回答に満足して百合根は頷いた。
「さて、お祭りのゴミ掃除も済んだところで、楽しいお祭りに戻りましょう。由香利ちゃん待たせちゃってるし。長く話し込んじゃって、由香利ちゃんも心配してるかもしれないし」
「そういえば、私も素華ちゃんをずっと待たせたままだった……あ、すみません、百合根さん。由香利の世話を押し付けちゃって」
「いいのよ。由香利ちゃんはかわいいし、とってもいい子だから、私もお世話楽しんでいるし。それに、私って一人っ子でしょ? 丁度弟がいなくなって甘やかす相手がいなかったから、妹が出来たみたいで嬉しいのよ」
何故だか、百合根は真由美の妹、由香利と仲がいい。真由美が山奥の作業所へと働きに行ってからというもの、何かと関わっているおかげかすっかり友達のような関係になったようだ。百合根には兄弟姉妹がいないから、ついつい甘やかす相手が欲しかったのかもしれない。
「弟がいなくなった……っていうと、もしかして裕也さん、木村さんの弟扱いだったんですか?」
「まぁ、そんな感じ……服、今まで庄司さんのおさがりばっかり着ていたけれど……百合根が色んな服屋に連れてって買ってくれたし……」
「服屋って言い方がすでに、ファッションに疎い感じの片鱗が見えているから、なんとなく連れていきたくなる理由がわかります」
「な、なんだよそれ!? 服屋は服屋だろ!?」
「あ、アパレルショップとかって言いましょうよ……」
「えー……」
真由美は苦笑しながらアドバイスをするが、裕也は納得しなかった。服は服屋で十分だろう、と。さて、そんな雑談をしながら素華の元に戻る間、真由美はせっかく二人きりなのだから、とそわそわしていた。手を繋いだりとか、そういうことをしてみたいのだけれどきっかけがつかめず……そんな時に見かけた看板に真由美は目を惹かれる。
「ねぇ、裕也先輩……あそこの射的、カップルだと安くなるそうですよ。手を繋いで一緒にお店に行きませんか?」
百合根がいなくなり、二人きりとなった真由美は、射的を理由にカップルのふりをしようとする。
「なんかほしいものでもあるのか?」
「ありますよー! あれです、あの白い頭巾をかぶった黒いウサギ!」
真由美はアルカリオのぬいぐるみ、シロミちゃんを指し示して笑う。あんなもの、本当はどこでも売っているようなものなのだけれど、一瞬でもカップルのふりをするために真由美は言い訳にさせてもらった。カップルだと1回3発300円が、2回で6発500円となる。
挑戦してみると、案外簡単なもので、真由美は1回目の2発目で難なくぬいぐるみが取れてしまった。500円を払ってしまった以上もったいないので、シロミちゃんとはライバル関係にあるマイメモリィのぬいぐるみを狙う。残った1発では取れず……裕也の挑戦で何とかそれを取ることが出来た。そうしてぬいぐるみをペアで持ち歩くことになった裕也と真由美は、はた目には恋人に見える状態になるのであった。
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