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第13章:お祭りの日

10話

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「本宮先輩、こんな風に凄むような相手にも向かっていくんですよね? 男がやっててもすごいのに、女性がやるって本当に考えられないね……」
 その様子を見て、素華は改めて明日香のすごさを認識した。男を相手にしても恐れず向かっていくことなど自分にはとてもできない、と。
「及川さんもそこら辺の男なら喧嘩で勝てそうなくらいには強いと思うけれど……相手が舐めているうちにこちらが全力で攻撃すれば大抵は行けるはず。でも、最初から危害を加える気満々で、人を傷つける事を何とも思っていないやつは別だけれどね……。今日の昼、真田さんが男相手に怯まなかったように、大抵の男は女を脅す度胸はあっても、女を傷つける度胸はないから。
 相手が本気を出さないうちに、ローキック……相撲で言えば蹴手繰りや蹴返しで機動力を奪って、容赦なく顎か鼻先に向かって突っ張り。そんな感じで勇気さえ出せば及川さんも男を相手にしたって勝てるだろ。なぁ、真田さんもそう思わないか?」
「え、私?」
「そう、真田真由美さん」
 裕也に指名されると、真由美は恥ずかしそうに顔を伏せる。
「そ、そ、そ、そりゃあ……私、スタンガンとかナイフとかで、父親に勝ちました、けれど。それ、勝ちって言っていいんですかね……?」
「勝ちは勝ちだけれど……まぁ、私も確かに、そうすれば勝てるかもね。はは」
 彼女の過去の所業を改めて言葉にされるとなんだかおもしろく、素華は笑みを浮かべる。
「心技体なんて言葉があるが、相手の心が整わないうちに、こちらが全身全霊で攻め立てりゃ、大抵勝てる。喧嘩ってのは、よっぽど実力差がない限りは気合入ってる方が勝つもんだからな。だからこそ、最初から良くも悪くも心が整っている奴……人を傷つけることに何の抵抗もない奴や、傷つける気満々の奴には絶対に向かって行ったり、戦おうとしちゃだめだからな? もしやるときは、それこそいきなり催涙スプレーやスタンガンでいい」
「あはは……昔の私の対応が正しいってことなんですね……」
 真由美は今も鮮明に覚えている、父親にスタンガンやナイフを刺したことを思い出す。相手が傷つける気満々な時は、一撃で仕留めるのが一番有効。真理ではあるけれど、殺伐とした世界だなぁ、と苦笑した。
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