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第12章:家出のお手伝い・後編

18話・終

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『家族、ねぇ。そういえば裕也、あなたは明日香のこと、家族だって思ってるって、言ってたわね』
「あぁ、言ったな」
『あなたにとっての家族って何かな?』
「……わかんね。でも多分、明日香が言っていたことで大体間違いないんじゃないかな? 家族に嬉しいことがあったら自分も嬉しくなるし、悲しいことがあったら自分も悲しくなる。家族を不幸にするやつは許せないし、家族を幸せにしてくれる奴は好きになる。……となると、俺の母親や家族なんて到底言えないし、真由美の父親もそうだ。遼君の両親は……どうなんだろうな、見たことがないからわからんが。アキラの両親もそれはもう酷かったし……」
『なるほど、シンプルだけれどこの上なく納得できる家族の定義ね』
「明日香は、出会ったときは俺を悪者だと思って、俺を容赦なくぶん殴ってきた。あの時は明日香のほうが体格も何もかも上回っていて、喧嘩じゃどうあがいても勝てる相手じゃなかったから……でも、それで終わりじゃなかった。俺が酷く痩せていて、そのうえ服もボロボロなことに気が付いたあいつに、その日のうちに神社に連れていかれたんだ。それからずっと、明日香も、明日香の両親も、俺がまともな人間になれるように俺の根性を叩きなおしてくれた。多少の体罰や、行動の強制、禁止はあった。最初はむかついたけれど、今はそれらが全部俺をまともにするための躾だったってことは納得している……最終的に俺が幸せになるための行動をしてくれた。だから俺は、明日香のことは家族だって思ってる。もちろん古々、お前にもな」
『そっか、触れないとか、普通の人間には見えないとか、貴方にはそんなことは関係なく、家族なのね』
「そういうこと……逆に触れられようと、血のつながりがあろうと、幸せを願えないなら家族じゃない。真由美の父親の躾とやらがまともじゃないのはわかり切ったことだが、噂の遼君はどうなんだろうな? やっぱり、まともじゃなさそう……」
『見たことはないから何とも言えないけれど、予想だとまともじゃないのは同意ね』
 裕也のぼやきに古々も賛同する。
「俺もさ、いつかは結婚して、家庭を持ちたいな……なんて思ってる。でも、きちんと家族を作れるかって、不安になることがたまにある……なぁ、古々。前も言ったけれどさ、俺が悪いことをしたら、お前は叱ってくれるんだよな?」
『えぇ、もちろん』
「いつか、俺が夫婦になったり、人の親になったら……その時は俺の事をたまにでいいから採点してほしい。なんて、言ったら迷惑かな?」
『その時も、暇だったらね……考えておく』
 何年先の話になるだろう、と考えながら古々は微笑む。
「ありがとう、古々。でも、恋人、妻、子供……出来るかなぁ……」
 裕也はそう苦笑して未来に思いをはせる。今はまだ秘密だが、少なくとも恋人はそう遠くないうちに出来そう、と思う古々であった。

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