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第11章:いいお話があります
29話・終
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数日後、明日香が相撲部の部活が終わった昼下がりの神社、日陰で木刀の素振りをしていると、通りがかった美紀を見つける。
「こんにちは、美紀さん、夏休みは満喫しておられますか?」
「えぇ、はい。お金がないことを家族に言ったら、こってり叱られた後に、なんだかんだで三万円のお小遣いをもらいました。なので、ちょっとだけ地元の友達と遊ぶ約束を守ろうと思ってるところです」
「守ろうと思いますって?」
よくわからない彼女の予定に明日香は首をかしげる。
「その友達とも、あの商売に勧誘しようと思ってたんです……遊びに誘って、昼食のタイミングにでも、儲け話を……。馬鹿ですよね、私? そんなことしたら絶対に友達なくすよね……でも、お母さんからもらったお小遣いのおかげで本当に約束通り遊べるかも」
「ほんと、来夢のせいで酷い状況になってたんだね……お小遣い貰えてよかったですね」
美紀の告白に明日香は笑う。
「はい、親には感謝しかないです。それと、言われた通りホープスネットオンラインの契約も解除しました。そして、他の会員にも注意喚起の文章を広めています。一応、かなりグレーゾーンで一応違法ではないだけの商売ですので、ほぼ間違いなく儲かることはないって……私の言葉がどれほど響くかはわかりませんが、貯金通帳という恥も公開して、全力で……貴方たちに助けてもらった分の100分の1でも世間に役立てるように」
「ちゃんとやってくれたんですね」
「えぇ。私の様に友達を失う人が、一人でも減ってくれたらそれでいいですので」
今回、美紀は明日香たちが人助けした分、美紀自身も誰かを助けるようにと言われていた。美紀が真っ先に思い付いたのは、自分と同じネットワークビジネスにハマる人間をひりでも少なくするための努力だ。そのために恥も晒した。恥ずかしいが、それでも……一人でもあれの被害にあう人間が少なくなれば、恥をかいただけの価値はある、そう思った。
「あと一週間ほど実家で過ごしたら、また大学に戻ってバイトしてお金貯めようと思います。風俗行かなくてよかったと思うと、ほんといい気分……それまで、実家にいる間、毎日足を運ばせていただきます。本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、本当に、カミナリ様に感謝してくださることが大事ですから」
タケミカヅチや振々からご利益をいただけるというのも、人助けをする理由の一つだが、やはりこうやって感謝されて、笑顔を向けてもらえるのはいいことだ。これだけでもすでにご利益を貰っているようなものだと、明日香は今の境遇に感謝し、それを神に捧げるのであった。
そして美紀も、二礼二拍手一礼をし、少額ではあるがお賽銭を投げて参拝をする。最低な男から逃げ延びた美紀は、穏やかな顔をしていた。
『ほう……当たり前のことではあるが、以前お参りをした時とは、まるで心情が違う。穏やかで、幸せで、感謝に溢れている』
その参拝の様子を見ていた振々が言う。彼女はタケミカヅチが好む感謝の心、信仰心のこもった祈りもできるようになり、詐欺にあってお金は失ったものの、また貯めればいいことだと前向きになることが出来た。
桜川美紀は、何もない日常のありがたみをかみしめて神社を後にする。心は、夏空のように晴れやかだ。
「こんにちは、美紀さん、夏休みは満喫しておられますか?」
「えぇ、はい。お金がないことを家族に言ったら、こってり叱られた後に、なんだかんだで三万円のお小遣いをもらいました。なので、ちょっとだけ地元の友達と遊ぶ約束を守ろうと思ってるところです」
「守ろうと思いますって?」
よくわからない彼女の予定に明日香は首をかしげる。
「その友達とも、あの商売に勧誘しようと思ってたんです……遊びに誘って、昼食のタイミングにでも、儲け話を……。馬鹿ですよね、私? そんなことしたら絶対に友達なくすよね……でも、お母さんからもらったお小遣いのおかげで本当に約束通り遊べるかも」
「ほんと、来夢のせいで酷い状況になってたんだね……お小遣い貰えてよかったですね」
美紀の告白に明日香は笑う。
「はい、親には感謝しかないです。それと、言われた通りホープスネットオンラインの契約も解除しました。そして、他の会員にも注意喚起の文章を広めています。一応、かなりグレーゾーンで一応違法ではないだけの商売ですので、ほぼ間違いなく儲かることはないって……私の言葉がどれほど響くかはわかりませんが、貯金通帳という恥も公開して、全力で……貴方たちに助けてもらった分の100分の1でも世間に役立てるように」
「ちゃんとやってくれたんですね」
「えぇ。私の様に友達を失う人が、一人でも減ってくれたらそれでいいですので」
今回、美紀は明日香たちが人助けした分、美紀自身も誰かを助けるようにと言われていた。美紀が真っ先に思い付いたのは、自分と同じネットワークビジネスにハマる人間をひりでも少なくするための努力だ。そのために恥も晒した。恥ずかしいが、それでも……一人でもあれの被害にあう人間が少なくなれば、恥をかいただけの価値はある、そう思った。
「あと一週間ほど実家で過ごしたら、また大学に戻ってバイトしてお金貯めようと思います。風俗行かなくてよかったと思うと、ほんといい気分……それまで、実家にいる間、毎日足を運ばせていただきます。本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、本当に、カミナリ様に感謝してくださることが大事ですから」
タケミカヅチや振々からご利益をいただけるというのも、人助けをする理由の一つだが、やはりこうやって感謝されて、笑顔を向けてもらえるのはいいことだ。これだけでもすでにご利益を貰っているようなものだと、明日香は今の境遇に感謝し、それを神に捧げるのであった。
そして美紀も、二礼二拍手一礼をし、少額ではあるがお賽銭を投げて参拝をする。最低な男から逃げ延びた美紀は、穏やかな顔をしていた。
『ほう……当たり前のことではあるが、以前お参りをした時とは、まるで心情が違う。穏やかで、幸せで、感謝に溢れている』
その参拝の様子を見ていた振々が言う。彼女はタケミカヅチが好む感謝の心、信仰心のこもった祈りもできるようになり、詐欺にあってお金は失ったものの、また貯めればいいことだと前向きになることが出来た。
桜川美紀は、何もない日常のありがたみをかみしめて神社を後にする。心は、夏空のように晴れやかだ。
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