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第11章:いいお話があります

9話

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「そうですね。今日も、部活の場所を貸していただきありがとうございました……さ、三橋先輩。清掃活動に行きましょう!」
「じゃあ、皿洗い頼むぜ明日香。食休みしたいところだが、俺も清掃活動に行ってきます」
「おう、俺も行くぜ」
 明日香に見送られながら、庄司さんも清掃活動の準備を始めた。

「しかし、毎回毎回素華って容赦ないな。口が立つから相手の反論を許さない感じだし」
 軍手やゴミ袋などを用意しながら、裕也は素華へ言う。
「私、昔から思ったことをそのまま言ってしまう感じで……そりゃもちろん、多少は自重しますけれど、理不尽なことには黙っていられなくって、それでトラブルになっちゃうんですよね……今回の場合は、はっきり言えてよかったと思いますけれど」
「そういや、それが原因でいじめられてたんだっけ? 毎回思うんだけれど、先輩にもこの調子じゃターゲットにされちゃうよなぁ」
「三橋先輩ですらそう思います? 確かに、虐められたのは怠けてて弱い先輩のために球拾いなんてしたくないって言ったことが原因ですからね。だって、ほんと嫌だったんですもん! 私は真剣にやってたのに、やる気のない先輩のために球拾いするの! 真面目にやってる先輩はいましたけれど……
 もちろん、三橋先輩にはあんな言葉使いしませんよ? 三橋先輩はまじめですし、いい人ですし……だから、しつれいな言動をしたくなる相手じゃないですから」
「わかってるって。ま、素華の口が悪かったのは確かかもしれないが、それに腹を立てて陰湿ないじめをするような奴を擁護する気はないよ。でも、将来就職した時に上司の理不尽に反発して嫌われたりしないように注意しろよ?」
「ふふん、この部活のおかげで録音と録画が有効だってわかりましたから、それで何とかしますよ……いやこれ、よく考えると私……かなり性格悪いですかね?」
「程度によるだろ? 『お前みたいなゴミにだって給料が発生しているのわかってる?』『会社の金にドブ捨てさせるのか?』……みたいなことでも言われてたら録音しちゃっていいんじゃない? そういう上司なら害悪だ」
「先輩、言いたいことはわかるけれど、会社の金にドブを捨てるんじゃなくて、会社の金をドブに捨てるんですよ、それ」
「……言いなれない悪口なんて真似するもんじゃないな。でも言い間違いくらい許してくれよぉ……」
 素華に笑われた裕也は、俯きながら苦笑する。ともあれ、さぁ清掃活動に出発だという時に、裕也の耳には古々の声が聞こえる。
『裕也……ちょっとでいいから、帰るのやめて美紀ちゃんの声を聞いてあげなさい』
 どうやら、美紀の話を盗み聞きしていたらしい古々は、何か聞いてしまったらしい。
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