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第10章:家出のお手伝い・前編

17話

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「まぁ、なんだ。お前の親はまだましだが、それでも幸せな暮らしができる親じゃないってのはよくわかったよ……でもよぉ、お前。絶対に自殺とかはしちゃだめだぞ? 俺みたいに、なぁんだかぁんだ生きることはできるんだからな」
 男は、自分が底辺の生活をしていることを理解しつつも、それでも何とか生きているからと、遼に自殺なんて絶対にするんじゃないぞと力強く励す。その言葉の温かさに、遼は思わず顔がほころんだ。
「えぇ、例え親との関係がこじれても、何とか生きていくことは出来ますからね。自殺はしないように、頑張ろうと思います……」
「おう、その意気だ! いいなぁ、家出かぁ! 俺なんて出ていく家ももうないってのによ!」
 男は遼の顔を見て、羨ましそうに、そしてどこか寂しそうに笑う。
「そういえば、名前を聞いてませんでしたね。俺は西野遼……高校三年生です。貴方は?」
「長谷川博(はせがわひろし)。何歳だったかなぁ俺……もう45歳になったっけか?」
 博はそう言っては、もう何歳だろうが関係ないわな、と笑っていた。
「実はもう、俺は借金完済してて、自由の身なんだよな。でも行くところがねえから、ずーっとこいつらが紹介してくれる現場にいるんだ」
「えぇ!? こんなところにいてきつくないんですか」
「きついさ。でも、借金を返し終えた今、借金があるやつよりずっと給料は良くなっているからな、お菓子とかも持ち込めるし、町に戻ったときはギャンブルも出来るし美味い飯も食い放題にできるくらいの金はあるんだ。女も抱けるんだぜ? あ、兄ちゃんにはまだ早いか。まぁ、体が動かなくなるまでは、あの刺青の兄ちゃんに見張られながら働くかもなぁ」
「あんな人と一緒に働いて怖くないんですか?」
「最初は別の人間だったけれど……ま、最初は俺もろくでなしの中のろくでなしだったからな。そりゃもう、そんな俺を働かせるために、怖い態度を取り続けるやつだったさ。でも、真面目に働いているうちに、どんどん評価されてよ。見張りの人間は何回も変わったけれど、引き継ぐときに俺のことは真面目な奴だって紹介してくれてんだ。だからなぁ、むしろ新入りの見張りが来たときは、必ず俺にあいさつするようになってくれたなぁ。刺青の入った知り合いの数は6人はいるぞ!」
「すごいですね……ヤクザって怖いイメージもありましたけれど、話せる人は話せるんですね」
 遼は感心して微笑む。
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