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第10章:家出のお手伝い・前編

9話

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「はぁ……バイトかぁ。今年はお祓いのバイトできるかなぁ」
「本宮先輩、お祓いのバイトなんてやってるんですか!?」
 真由美たちのバイトの話を聞いて、今年の夏休みはお小遣が稼げるだろうかと明日香がぼやく。
「うん、巫女服を着て、お父さんの補助するの。お母さん、夏はちょっと暑くてばてるからって……お祓いや祈祷を私が代わりにね」
「へー……ちょっと憧れちゃいますねぇ、巫女服を着て、厳かな儀式をするの」
 素華は興味津々で明日香の話に耳を傾ける。
「すげー美人だぞ、明日香の巫女服姿」
 そう言って裕也は古々を見る。古々と明日香、巫女服の美しさは甲乙つけがたいほどだなぁと、改めて自分が美人に挟まれていることを実感した。

 その夜、裕也は自宅にて古々と2人きりとなって、前々から気になっていたことを尋ねてみる。
「そういえば古々、祈祷とかお祓いとか、明日香がやっているけれど……お前ってさ、この神社に尋ねてきた人間の悪霊とかを祓ってるよな?」
『えぇ。神社には穢れを持ち込まれたら困るから、この神社に居つきそうなロクでもない悪霊や妖怪のたぐいは全部引っぺがして始末してる。でも、人にべったりと張り付いているような奴らにはわざわざ手を出さないわね。
 でも、あなた達が助けようとしている人間に取り憑いた奴は別よ? 悪霊を取り除かないと、いつまでたっても前に進めないような精神状態になりやすいし』
「そう、それなんだよ。古々って、俺達が頼むまでもなく、当たり前のように除霊しちゃってるじゃん。お祓いって言うのか? 一体どうやっているんだ?」
『どうやってって……』
 古々は言いながら裕也の肩に手を伸ばす。
『こうやって悪霊をわしづかみにして』
 そのまま古々は腕を叩きつけるように下に振る。
『こうやって悪霊を地面に叩きつけたら……』
 言いながら古々は踏み潰して、ぐりぐりと踏みにじる。
『こんな感じで踏み潰して、終わり……かな。その辺の悪霊程度なら、5秒かからないかな』
 古々は神使だ。人知を超えた存在だし、何か魔法のような力で悪霊退治をするものだと思っていたが、思ったよりも武闘派な退治の仕方に裕也は思わず苦笑する。
「そんな虫でも退治するみたいな……こんなに簡単に悪霊の退治が出来るんじゃあ、お祓いってする必要がないな……」
『まー、もちろん悪霊を祓う能力を持った人間もいるけれど、普通に私に任せちゃって大丈夫ねぇ……でもほら、気持ちの問題。プラシーボ効果って奴があるから、やっぱり明日香ちゃんや信二さんが厳かに儀式を執り行うことは大事よ。病は気からっていうし、そうやって気持ちをリフレッシュすれば、病気知らずになるから』
「それもそうか。意味のないことに見えても、ちゃんと気持ちや士気を上げられるならやる意味はあるよな」
 古々のことをまた一つ知ることができ、裕也は嬉しく思いながらそう結論付けた。
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