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第10章:家出のお手伝い・前編

8話:攻めの家出

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「父親に腐ったものや床に落ちたものを喰わされたこともありますから。自分で料理したものなら大抵食べられます」
「……そこまで、言うなら。でも、なんで? 高校生がやるバイトにしては確かに高額の時給かもしれないけれど、望んでやるようなものじゃないけど? きつい仕事だってのはともかくとしても、さ。やばい男に囲まれる……それが一番問題だと、私は思うんだけれど」
 百合根は再度忠告をするが、真由美は首を横に振って否定する。
「先ほども言いましたが、私も母親が信用できないから高校を卒業したら家を出たいって思ってます。妹の様子も見ながらになっちゃいますけれど。だから、家を出るためにお金を貯めたり、一人で生きていける実感が欲しいって思ってまして。
 ちょっと、その親に進路を強制されている人と話してみて、その人が信用できそうなら、私も一緒に行って見ようかな……なんて。あと、百合根さんをちょっと疑ってたんです。本当に大丈夫な職場なのかなって。だから、大丈夫な職場なのかを見極めるために、私も行きたいんです。あとですね、その百合根さんの同級生とやらも、不安でしょうから……若輩者ですが、私も傍にいて励ましあえればな、と。辛い時や不安な時、誰か支えてくれる人が一緒にいる安心感って半端ないですからね」
 そう真由美は言う。そこにいた4人は、感心した表情を見せている。
「なるほど……確かに、そんな苛酷な職場に1人放り出されるって不安だし、一緒にいてあげると言うのはいいことかもしれないけれど……でも、本当に大丈夫?」
「私は父親にスタンガンとナイフを突きつけた女ですよ? セクハラしてくる奴にはやり返してやりますから」
 真由美は胸を張ってそう宣言する。
「本当にこれが最後の忠告だけれど、多分だけれど当たり前のようにセクハラがあるし、汚いおやじの汚い視線に晒されるけれど、それでいいのならば……。
 あ、でもさすがに直接手を出されることはないと思う、刺青の入った怖いお兄さんが金属バット持って見張っているから、直接的なボディタッチとかは無いはず。でも、覗きとかには気をつけてね、本気でやるつもりならさ」
 百合根は苦笑する。
「わかりました。それじゃあ、後日……良ければ、私とその人で話す機会をいただきたいのですが」
「構わないわ。今聞いておく」
 真由美は百合根の言葉を聞いてほっとする。妹には家を空けることを謝りつつも、お金が入ったら遊園地へ行くことを約束する。由香利は喜び、無邪気に応援してくれるのであった。

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