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第10章:家出のお手伝い・前編

6話

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「あら、そんなに天引きを安くできるんだとか思ってない? その通り、あくどい商売なのよ、おーっほっほ」
 百合根がわざとらしく笑いながら他の面々を見ていると、真由美が疑いのまなざしで百合根を見ている。
「何かしら、真由美さん?」
「いや、怪しいなぁって。世の中悪い人ってたくさんいますし、そういううまい話程警戒しなきゃいけないんです……」
 真由美は言いながら百合根の顔を見る。表情から悪意を察せられるほど、真由美の見る目は鍛えられておらず、何もわからない。
「いい心がけじゃない。確かに、私は借金している人には日給1万円って触れ込みで仕事させて、実際の手取りはさっき言った通り悪魔的な天引きがされている。そう考えると、私が提示した条件を信頼できないのもわかる。
 でも、私だって学校生活があるのよ? 同じ部員同士、友達と言えるほどじゃないけれど、それでも罪もない同級生を陥れられるほど図太くなくてよ? カタギには手を出さないのが、私なりの筋の通しかたなの。だから、信じて」
「ま、それもそうですね。うーん……」
 百合根の言葉は本心からの言葉だ。しかし真由美に証拠を示すことはできない。彼女の言動を嘘じゃないとはっきりわかるのは、人の心が見える古々だけだ。
『嘘はないようね』
 と、お墨付きだ。古々の声が聞こえたため、明日香、裕也、百合根の視線がそこに向かう。
「ん? 何か?」
 と、素華と他の二人の視線もそこに泳いだが、何もない。
「虫がいたのよ。昔から武道をやっていると、その辺敏感になるから」
 ミステリアスな自分でいたいのに余計なことを言いやがって、と古々に対して思いながら百合根は苦笑した。
「うーん、私としてはあれね。百合根ちゃんは、親が色々ある人だから、嘘をつくことも多いけれどさ。でも、こういうことで誠意のない嘘をつくような人じゃないから、信用してもいいと思うよ」
 明日香が真由美へ言う。
「そういうものなんですか? 確かに、虐めの解決を強引に行うのと違って、今回の場合は騙せばガチの悪事ですしね……」
 なんだか腑に落ちない様子で真由美は言った。
「ふーむ……ねぇ、由香利。なんていうかさ……世の中、上手い話はいくらでも転がっているけれど、そういうのは絶対に疑ってかからないとダメだからね? こういうお姉さんみたいな、人の利益をむしり取る人っているから」
「え、百合根さんのこと信じちゃいけないの?」
「そういうわけではないんだけれどね……美味しい話ほど、ヤバイからね」
 そして、隣に座る由香利と色々話し合う。妹と話し込む真由美をよそに、百合根は続ける。
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