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第10章:家出のお手伝い・前編

4話

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「……じゃ、私はその子の悩みを解決することについて賛成派なので、多数決で悩みの解決を手助けすることにするわ」
「それはいいんですけれど、具体的にどうするんですか、それ? 親を殴るわけにはいかないですよね? 私の親や……以前相談に来てもらった北条さんのような親なら気兼ねなく殴れって言えますが、束縛が厳しいだけで犯罪をしているわけじゃないし……」
 真由美に尋ねられると、百合根は頷いて続ける。
「確かに、殴るという最終手段を使うほど、クズな親というわけでもない。だからと言って、いい親とも言い難い。だからね、とりあえずの案だけれど……私達で家出を助けてあげるのってどうかしらね? 家出の一つでもしないと、親には本気が伝わらないでしょ?
 でも、家出と言っても、友達の家を転々とするとかだと、ただの子供のわがままに終わってしまう。いずれお金が尽きて、親に頼らざるを得なくなる。親に頼らざるを得なくなったら、子供の弱さというものを思い知らされてしまう。
 だから、私は住み込みの短期で出来る仕事を紹介して、お金を稼がせてあげようと思ってる。夏休みも近いことだし……逃げの家出じゃない、攻めの家出をする! 家出してお金をすり減らすんじゃなく、むしろ家出してお金を増やして家に帰る。それが私のアイデアよ」
「……なんでそんな仕事を紹介できるコネがあるんですか? 木村先輩、あなた高校生ですよね?」
 素華が尋ねると、百合根はコホンと咳払いをしてからしれっというのだ。
「お父さんが色んなお仕事を手広くやっているから、人材派遣会社にもコネがあるのよ、私」
「へ、へー……ヤクザのコネ、です、かぁ」
 素華は苦笑する。
「それで、お父さんの職場でね、借金を抱えた人に紹介する少しきつめのお仕事が住み込みであるの。もちろん、借金するような計画性も何もないゴミでもできるような簡単な仕事だから、高校生でも問題なくできるわ」
「そ、それは別の問題が発生するんじゃ?」
 百合根の危ない発言に裕也は苦笑しながら相槌を打つ。百合根は悪びれずに微笑んでいる。
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