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第9章:最低な男を探せ

19話

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 結局、心は晴れても空は晴れていないので、その日の裕也はアパートからほとんど出ずに上半身の筋トレをした後、勉強を始める。気圧の低さのせいで集中力も保てず、もやもやした頭のままスマートフォンをいじっていたが、そろそろ分厚い雲の向こうにある太陽も沈もうという時間帯。
 ふと通知音に目をやると、明日香からのメッセージが届いていた。『今日、久しぶりに食事に来ない?』という簡素な文面からでは、明日香が裕也に失言したことを気にしている様子は伺えないが、何の記念日でもない今このタイミングでこんな誘いをよこしているということは、明日香は昨日の裕也の様子がおかしかったことを、気にかけているようだ。
『行くよ』
 なんと言葉をかければよいのかわからず、裕也も簡素な一言だけで済ませた。
「明日香と何を話せばいいんだろうな……あんな気まずいことがあった後でさ」
『いいじゃない、言いたいことを言えば。少しは頭も冷えたんでしょ?』
「……まあな。古々のおかげで」
『あら、嬉しい』
 言葉通り、古々は笑顔を浮かべている。仲直りのチャンスが出来たのは嬉しいことなのだが、勉強にはさらに集中できなくなってしまった。全く、昨日は余計な会話をしてしまったものである。
 いつも相撲部の活動場所として利用している明日香の家、兼神社。降り続く雨にうんざりしながら、神社へと続く階段を上っていくと、住居兼社務所となる場所の玄関にはすでに明日香が待ち構えていた。
「ようこそ」
「いつも来てるだろ、部活で」
「そうだね」
 お互い何を話せばいいのかもわからず、目を逸らしたまま気まずい時間が流れる。はた目には恋人か何かのやり取りのようだが、実際のところはそんないいものではなく、どう謝るべきか、どう許すべきか、相手を不機嫌にさせないように慎重だ。
「裕也君……貴方の前であんな話をして、貴方がどう思うか、考えてもいなかった、無神経だった……ごめん」
 やがて先に口を開いたのが明日香であった。
「私は、今でも答えは変わらない。あいつに……小泉日向と、たっくんに子供をきちんと育てられる能力があるとは思えない……だから答えは変わらない」
「だろうな。俺でもそう思う。だから、お前の言うことは間違っていない……だからこそ、むかついたんだけれどな」
 そう言って裕也はため息をつく。
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