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第9章:最低な男を探せ

13話

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「ちょっと! 早く出なさいよ! いるんでしょ、たっくん!」
 それどころかドアまで叩き始めて物凄い剣幕だ。
「待ってください、日向さん」
「何よ?」
「んー……洗濯機回してる音がする。クーラーとか除湿器はどうかな……」
 そんな剣幕では居留守を使われるのではないかと思いきや、素華は冷静に周囲を観察して情報を得る。
「すみませーん。いるんでしょー? クーラーと冷蔵庫、ついてますよ。もしかしてランクマッチの最中ですかー?」
 そんな風に論理的に相手を追い詰める素華を見て、あんまり敵に回したくない相手だな、と真由美も明日香も思う。ただ、日向は何も考えていないので、たっくんがいるとわかって大喜びだ。
「うるせぇよ! 何の用だよ!」
 最初に元カノの声がしたので、もう用件は分かっているようなものだが、逆切れ気味にたっくんが飛び出してきた。
「たっくん! 妊娠したってわかった瞬間に連絡手段を断つとかどういうこと!? ツイッターのアカウントもブロックするし、COCOAも出ないし!」
「あ、あれはちょっと手違いでそうなっただけで」
「手違いでなるわけないでしょ!」
「だ、大丈夫だって……お金を集める準備に忙しかっただけだから。ほら、妊娠したら何かとお金がかかるだろ?」
「じゃあいくら集まったの!? 言ってみなさいよ」
 二人そろってギャーギャーとわめきたて、何が何やらといった状況だ。
「はいはい、ちょっと待ちなさい。えーと、たっくんとやら……その、お金を貯めてたっていうことは、責任を取るつもりだったってことね?」
 このまま言い争いをさせていても全く事態が進展しなさそうなので、見かねた素華が仲裁に入る。
「は? 当たり前だろ……っていうかお前誰だよ」
「じゃあ、身分証明書と、親の連絡先、教えてもらえますか? 私達は部外者なので教えて貰わなくてもいいですが……せめて日向さんには教えられますよね? まさか、出せないなんて言いませんよね? せめて、日向さんにだけでも教えられますよね?」
「く……」
 素華の言葉に反論も出来ず、たっくんは家の中に戻ると、財布に入った学生証や免許証を突き出してくる。

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