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第9章:最低な男を探せ

15話:生まれてきたのは間違いなのか?

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 日付は一日さかのぼる。特定作業が終わり、雨の帰り道。裕也は傘を差しながらとぼとぼと歩く。
「くそ……不幸になるくらいなら生まれないほうがましだとか……勝手なこと言いやがって……」
 裕也は一人毒づいて、俯き歩き続けた。
『確かに、勝手ね……でも、彼女たちも悪気があって言ったわけじゃなくって……』
「わかってるよ! わかってるから……俺は何も言えないんだ……」
 古々が皆の発言のフォローをするも、裕也は苛立たしげだ。
『……貴方は、不幸じゃないわ』
「昔は不幸だった!」
『でも今は幸福で……』
 まだ古々は、裕也の事情を全て聞いているわけではない。裕也が何に怒っているのか、予測は出来ているが彼の口から語られたわけではない。それでも、今の彼が不幸ではないことは確かだ。だから、苛立つ裕也の言葉を優しく否定すれば、きっと大丈夫。そう思っていたが、簡単にはいかないらしい。
「だとしても、俺の母親が俺を産むときにあいつらが説得していたら、俺は死んでたんだ! 堕胎されて……くそ」
 もちろん、裕也の母親の時代に発達したSNSはないし、相撲部の面々は生まれてすらいない。裕也だってそれはよくわかっている。だけれど、同じような状況で出産され、その後孤独な幼少期を過ごした裕也には、あの会話は耐えがたいものだった。
「確かに俺は不幸だったかもしれないけれど、でも……俺は……」
『あの子たちは今のあなたを否定したいわけじゃ……』
「それもわかってる! あいつら、俺のこと何も知らないんだから当然だ……明日香だって、俺のことを気にしてなかっただけだろうし……そこに悪意はないんだけれど……いや、俺だって、明日香に助けられなきゃ……今ごろ死んでたか、少年院の中もしれないけれど……」
 珍しく裕也は取り乱し、大声で古々に八つ当たりをする。どうにかなだめようとする古々だったが、今の彼はどうにもならないほどいら立っている。
「だからって、俺は、生まれちゃいけない存在だってのかよ……くそ」
 裕也が肩を落とす。古々も、どう励ましたものか悩ましかった。
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