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第9章:最低な男を探せ
14話
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「これで満足かよ……」
「ほら日向さん。写真撮影して」
「あ、はい……」
素華に促されるままに日向はたっくんの身分証明書を撮影する。本名は竹中匠(たけなか たくみ)というらしい。
「あとは電話番号、貴方のと両親のものもね。逃げようなんて考えないことね……今度はこっちがネットを使って人探しするから」
匠は素華を睨みつけたが、それ以上の抵抗はせずに両親の連絡先を教え、一度自分の電話で話してから日向に電話を代わらせた。
「あぁ、匠のお母さんですか? 貴方の息子が、私が妊娠したとたんに逃げたんですけれど! 親切な人が住所特定してくれなかったら、こいつそのままどっかに言ってたんですよ!」
そんなことを大きな声で話すものだから、周囲には丸聞こえだ、201号室の住人はドアを少しだけ開けて様子をうかがっていたものの、真由美と明日香に見つめられて慌ててドアを閉じている。穏便に済む話ではなかろうが、とりあえず相手の住所を特定するまではサポートしたのだ、これで問題ないだろう。
「じゃあ、あとは当事者同士でお願いいたします……日向さん、約束は分かっていますね?」
自分たちはもう退散したほうがいいだろうと、明日香は尋ねる。
「あぁ、神社へのお参りでしょ? するわよ」
これはお参りをしても感謝するかどうか怪しいな。明日香はそんなことを考えてため息をついた。
結局、日向はその後しばらく連絡をよこさず、神社にお参りにも来るまでに二週間ほどかかった。遅めのお参りついでに受けた報告では、匠は両親に散々怒られながらお金を出してもらったそうで、当分は遊びはできず、夏休みはバイト三昧になるようだ。バイトに支障が出るのも何なので、殴られたりしなかったのは幸いだろうか。
もし支払いが遅れたときは、それなりの措置を取ると脅されているので、まさか逃げられることはないだろう。
日向は双方の両親と合わせて6人での話し合いの結果、中絶することも決まってしまう。母胎への負担は自業自得で諦めるしかないだろう。結局、二人は収まる形に収まったという感じであった。相撲部の面々は、堕胎するという結果を聞いた時は、何だかやりきれない気分になる。あまりに無責任な二人に、静かな怒りを覚えるのだが、当の日向は軽い調子だ。相撲部の面々に『ありがとねー』と言って、堕胎も軽く見ている様子で帰っていくのであった。まともな性教育を受けたかも怪しいあの態度に、やっぱり中絶して正解だったのだ、と相撲部の面々は思うことにした。
「ほら日向さん。写真撮影して」
「あ、はい……」
素華に促されるままに日向はたっくんの身分証明書を撮影する。本名は竹中匠(たけなか たくみ)というらしい。
「あとは電話番号、貴方のと両親のものもね。逃げようなんて考えないことね……今度はこっちがネットを使って人探しするから」
匠は素華を睨みつけたが、それ以上の抵抗はせずに両親の連絡先を教え、一度自分の電話で話してから日向に電話を代わらせた。
「あぁ、匠のお母さんですか? 貴方の息子が、私が妊娠したとたんに逃げたんですけれど! 親切な人が住所特定してくれなかったら、こいつそのままどっかに言ってたんですよ!」
そんなことを大きな声で話すものだから、周囲には丸聞こえだ、201号室の住人はドアを少しだけ開けて様子をうかがっていたものの、真由美と明日香に見つめられて慌ててドアを閉じている。穏便に済む話ではなかろうが、とりあえず相手の住所を特定するまではサポートしたのだ、これで問題ないだろう。
「じゃあ、あとは当事者同士でお願いいたします……日向さん、約束は分かっていますね?」
自分たちはもう退散したほうがいいだろうと、明日香は尋ねる。
「あぁ、神社へのお参りでしょ? するわよ」
これはお参りをしても感謝するかどうか怪しいな。明日香はそんなことを考えてため息をついた。
結局、日向はその後しばらく連絡をよこさず、神社にお参りにも来るまでに二週間ほどかかった。遅めのお参りついでに受けた報告では、匠は両親に散々怒られながらお金を出してもらったそうで、当分は遊びはできず、夏休みはバイト三昧になるようだ。バイトに支障が出るのも何なので、殴られたりしなかったのは幸いだろうか。
もし支払いが遅れたときは、それなりの措置を取ると脅されているので、まさか逃げられることはないだろう。
日向は双方の両親と合わせて6人での話し合いの結果、中絶することも決まってしまう。母胎への負担は自業自得で諦めるしかないだろう。結局、二人は収まる形に収まったという感じであった。相撲部の面々は、堕胎するという結果を聞いた時は、何だかやりきれない気分になる。あまりに無責任な二人に、静かな怒りを覚えるのだが、当の日向は軽い調子だ。相撲部の面々に『ありがとねー』と言って、堕胎も軽く見ている様子で帰っていくのであった。まともな性教育を受けたかも怪しいあの態度に、やっぱり中絶して正解だったのだ、と相撲部の面々は思うことにした。
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