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第9章:最低な男を探せ

3話:特定作業

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 土曜日、素華はその女性を連れて相撲部の活動場所へと訪れる。百合根は今日もこの場に来ていない。季節は梅雨ということもあり、部活は雨降り。土俵の上には屋根があるものの、じめじめした空気は汗を乾かしてくれず、容赦なくやる気を奪う天気である。
「この人が先日言っていた女性なんだけれど……ほら、自己紹介して」
「小泉日向(こいずみ ひなた)です……今日はその、私の彼氏を探してくれるって……」
 先日以降、日を置いたおかげか幾分か落ち着いた様子の日向という女性は、素華にも自分の両親にもこってりと絞られたおかげだろう、随分としょんぼりしている。
「あぁ、この人がその、妊娠したとたんに彼氏に捨てられたっていう……何と言うかその、不幸な女性」
 裕也は言葉を選びながら、しかし言葉選びに失敗ギリギリの言葉で素華に確認を取る。
「そ、馬鹿でしょ? 本名を知らない相手と、コンドームも使わずにセックスしたんだって。産婦人科で喚いててさ……ばっかみたい」
「おいおい……」
 素華の言葉は、それはそうなのかもしれないが、皆の前であけっぴろげに言うことじゃないんじゃないか? と、裕也は引いている。
「えー、それはアホでしょ。なんでコンドーム無しのセックスを断らなかったの? デキ婚狙ってたとかならわからないでもないけれど……大体さ、妊娠するかどうか、性病にかかるかどうか、恐怖しながらするセックスなんて楽しいの? 他のことを何も考えずに、セックスすることに集中するために、コンドームがあるんじゃない」
 明日香も遠慮なしに言う。しかし、彼女はまるで経験でもあるかのような言いっぷりだな、と裕也は苦笑する。まぁ、あの古々や振々をいった守護霊が憑いているのだから、あるのかもしれない。もっとも、明日香の場合はよっぽど性病の心配がある時以外はコンドームは必要ないだろうが。
「お二人とも、ズバズバですね……」
 真由美も明日香と同じ意見だが、傷ついてへこんでいる女性に対してここまでズバズバと言えるほどの図太さはないため口をつぐんでいるのだが、素華といい全く容赦がない。
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