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第8章:部活にクレーム

23話

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「有名人がゲイなら問題ないと考えるのは、それは権威主義ということか? 偉い人がやっているのなら間違いないが、その辺の一般人がやるなら間違っている、そういうことかな? 大統領なら人殺しをしても大丈夫ということかね? まぁ、独裁者の国ならわからないでもないが」
「いえ、そういうわけでは……」
「では、どういうわけなのかな?」
「自然ではないというか……」
「キリンの雄は9割がオス同士のカップルだし、イルカは若いオスは年上の雄で交尾の練習をするというな。で、自然が何だって? 君が持っているスマートフォンや車は自然なのかな? 飲んでいるお酒は自然かな?」
 自分の狭い常識だけで語る父親に対して、所長はなんでそんなことまで知っているんだと言いたくなるほど、知識でもってして父親を論破していく。結局、父親が何を言っても即座に言い返され、父親はそのうち何も言えなくなってしまう。しかし、所長はどこからそんな知識を仕入れてくるのやら。
「それでは、君の結論では、ゲイの息子がクズであるという考えは間違い、ということでいいのかね?」
「は、はい……」
「じゃあ、もう一つ質問しようか。ゲイがクズであるということは……今、ここで、間違いだと、いうことに、気づいたのか? それとも、実は、間違いで、あることを、分かっていたが、子供に逆らわれるのは、気に食わないから、間違いを認めなかった……だけなのか?」
 所長の問いを聞いて、裕也は『意地悪だな』と苦笑する。所長の質問は、前者と答えればよく考えずにしゃべる馬鹿。後者と答えれば人によって態度を変える信用に置けない人物という評価になる。どちらに答えても、父親が無能と判断せざるを得なくなる。
 この人は何だか素華と似ていて、舌戦に長けているようだが、素華と違って権力がある分、神社に押しかけてきた母親の様に勢いで押し切ろうとすることもできない。だから、口のうまさでも権力でも勝てない相手と退治させられた父親は、答えることすらできなくなってしまう。人の上に立つ人物とは、こういうことなのか。
「答えにくい質問だったかな? では質問を変えよう」
 いい加減待ちくたびれたのか所長はそう言って続ける。
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