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第8章:部活にクレーム

15話

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「俺は、『お前たちがやったのは器物損壊だ!』って、何度も言ったのに、両親は絶対に弟に謝らなくて……」
「お前の親って謝ったら死ぬ病気なのか?」
「かもしれませんね。その日はもう何もなかったんですけれど……次の日、弟は母親や父親の持ち物をリサイクルショップに持って行って売ろうとしたんです。法律がどうこうで、身分証明とか年齢とかの関係で売れませんでしたけれど」
「まぁ、そりゃそうだろうな」
「そしたら、弟は両親の財布を盗んで……新しいぬいぐるみを、買いました」
「それで終わりか?」
「いえ、母親はそれすらも捨ててしまいました。そしたら、弟は母親の服を切り裂いて、父親の持っている酒を水道に流してしまって」
「自分のものを勝手に捨てられたんだし、まっとうな仕返しだな。お前、気が強いところは兄弟で似てるのな」
「弟としては、『これ俺の気持ちがわかったよな?』って言いたかったんだと思います。だから俺は両親に対して、早いところ弟に謝れって、何度も言ったのに……両親は絶対に謝らなくって」
「それって頭おかしくないか?」
「おかしいです。俺の言う通りにしたり、自分のしたことが間違いだったと認めることが、親としては絶対許せないことなんでしょうね……でも、そうやって謝らないから、次の日家にあるブランドのバッグと服は全部切り裂かれて、オヤジの私物は酒だけじゃなくて、釣り竿までぶち壊されてて……もう家の中全部めちゃくちゃで」
「そいつは酷いな。それで、どうなったんだ?」
「弟は家の中で常に包丁を持ってて、両親とは全く話さずに部屋にこもりました。そして、部屋には俺も含めて誰も入れようとしないんです。もうめちゃくちゃで、どうすればいいかわからないんです。俺の両親が何と戦っているかもわからなくて。弟は、親と戦っているんだけれど……親はなんか別のものと戦っている気がして……」
「アルカリオのグッズを捨てたことを謝れば多分、そんな事にゃならなかったのに。狂人の考えることはわかんねえな……そもそも捨てるなって話だけれど」
「ですね」
 親を狂人と言われた事を気にする余裕もなくアキラは続ける。
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