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第8章:部活にクレーム

4話

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「あー……私が入るときにこの学校、警察沙汰があったとかっていうのはそれだったんですね。むしろ、取り返しがつかなくなる前にいじめ問題に真摯に取り組んでくれていい学校だと思いましたけれど……他の教師陣はそれでも問題が表面化するほうが面倒なんですかね?」
 一連の話を聞いた真由美はそんな感想を漏らす。
「虐めってどんなところでも起きる可能性があるわけですし、場合によっては命すら失われる。隠すよりかは……私も当事者だったからわかりますけれど、むしろ有田先生のほうが信用できますね、それ」
 かつていじめられていた素華はそうやって、むしろ有田先生のほうを指示した。
「なるほど、そういう見方もあるんだね。有田先生、面倒くさがりで、学校が残業代つけない限りは絶対に残業しない宣言してて……だから、相撲部でも空気みたいな扱いなんだよね。でも、それだけに、今回の難癖に関しては安心だね」
「と、言いますと?」
 真由美が尋ねると、明日香は苦笑する。
「男女で相撲をやるだなんて不健全とか言う馬鹿な親たちも、有田先生はそういうの、構わず突き放すだろうってこと『自分の目で確かめればいいじゃないですか?』とか『そもそも、仮に男女が相撲をやろうと、お互い同意の上なら法律で禁じられていません』とか。『男女の交際を学校の権限で禁じるのは憲法違反です』とか……言いそうな人なんだよねぇ
 明日香は言い終えて、肩をすくめて苦笑した。
「そりゃもう、無敵ですねぇ……でも、痛快じゃないですか。有田先生って相撲部の練習には全然来ないですよね……それも、そんな感じでズバッと言った結果なんですか?」
「そうね……いや、噂によると『残業を強制するのならお金をください』『ただで人を働かせようとは、貴方たちは奴隷が欲しいんですか?』とか。『教育者として、残業の出ない仕事は子供に見せたい背中ではありません』ズバズバ言って、校長先生も部活の顧問の仕事を強制できないのだとか」
「あはは……そりゃ、今までの同調圧力が通じなくなって、困るでしょうね。でも、そんなことで困る状況そのものが、困りものですね……皮肉なことに」
「そんなんで、他にしわ寄せが行くから、教師陣からは評判が良くないんだけれど。女子が相撲部に入っている状況、思えば有田先生が顧問で助かったのかも」
 どんなクレームが来たんだろうな、と苦笑しながら明日香は言った。
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