上 下
144 / 423
第7章:男になりたい?

25話:カミナリ様に恥じない

しおりを挟む
「この神社に感謝するって言うのはつまり……生きていくうえで、カミナリ様に恥じないように生きていく、その心構えを持ってほしいって意味なの。あ、お天道様じゃなくてカミナリ様なのは、ウチの神社が雷神、タケミカヅチを祀る鹿島神社だからね?」
 明日香は微笑み、続ける。
「つまり、私達が貴方を助けたように、貴方もどこかで誰かを助けてほしいの。それが、私達にとっての一番の恩返しだから。よそでやってくれって言ったら、なんか恩返ししたら迷惑って言っているみたいだけれど、そういうわけじゃないからね?」
「なるほど、どこかで、誰かを助ける、ですか」
 綾乃にオウム返しされた明日香はそうだよ、と肯定の意を込めて頷く。
「私達はカミナリ様に恥じないよう生きた結果、貴方を助けた。だから、貴方もカミナリ様に恥じないように生きて欲しいの。そうして、カミナリ様に感謝し、カミナリ様の存在を感じる。それが、神を信仰するってこと。お天道様のように、いつも見守ってくれるわけじゃないけれど、カミナリ様はちゃんと見守ってくれているから、ゲリラ豪雨の日にでもたまに思いだして、カミナリ様……タケミカヅチに祈ってくれればいいかな」
「カミナリ様に恥じない……ですか。いいですね」
 明日香に言われ、綾乃は胸に手を当て、頷いた。
「いきなり人助けをしろと言われても、何からやればいいかわかりませんが、その……あの。私も、カミナリ様に恥じない生き方、してみたいと思います。相撲部の皆さん、何から何までありがとうございました。」
 綾乃は改めて頭を下げる。
「今日はまだ家でやることがあるので、そろそろ帰ろうと思うのですが……最後に、お参りをさせてください。カミナリ様、タケミカヅチに」
「よし来た!」
 綾乃がお参りの意思を見せると、明日香は嬉しそうに手水舎や拝殿を案内する。そこで綾乃は深く、深く感謝をしてから、家に帰っていった。その後ろ姿を見送りながら古々は言う。・
『あのね、明日香、裕也。あの子、昨日まで悪い霊に取り憑かれていた……人が落ち込んだ時やイライラした気持ちを啜る貧乏神の一種よ。でも、私が除霊した。貴方たちが彼女の背中を押して心を強くした……彼女はもう、理不尽な男に負けることはないし、似たような霊には取り憑かれないわ。頑張ったわね』
 綾乃の変化を喜ぶ古々に、言葉で応える代わりに裕也と明日香は親指を立てて古々にリアクションを示した。

 綾乃が返っていってから、裕也はふと思う。明日香が人助けをした相手に、お参りに来るように頼むのはいつものことだが、今日の明日香はなんだかいつもよりもいいことを言っていたな、と違和感を覚える。
「そういえば明日香? なんか今日は、いつもよりも饒舌だったじゃねえか。なんか、カミナリ様に感謝がどうとか。どういう風の吹きまわしだ?」
 裕也に言われると、明日香は少し前のことを思い出して笑う。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

男子高校生の休み時間

こへへい
青春
休み時間は10分。僅かな時間であっても、授業という試練の間隙に繰り広げられる会話は、他愛もなければ生産性もない。ただの無価値な会話である。小耳に挟む程度がちょうどいい、どうでもいいお話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

あしたのアシタ

ハルキ4×3
青春
都市部からかなり離れた小さな町“明日町”この町の私立高校では20年前に行方不明になった生徒の死体がどこかにあるという噂が流れた。

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

処理中です...