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第7章:男になりたい?

21話

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「ほら、さっき脅し取った金は返すよ。なんせ、他人が頬っぺたをつねると犯罪になるらしいからな? でも、家族だったら……催涙スプレーをぶっかけられようが、鞭でひっぱたかれようが犯罪じゃないんだろ? なぁ?」
 先ほど脅し取った一万円札を地面に落とし、さらに重ねて煽るも、男たちから答えは返ってこない。
「だんまりかよ……つまんねーなおい。まぁいいや、今日は帰る。明日も綾乃さんと同じ学校に行くから、警察を呼ぶならそこで……それとも、何も持たずに家を追い出されたし、目が開かないからスマホの操作もできないか? このお隣さんに警察呼んでもらうか? 警察を呼ぶなら俺は抵抗しないからよ、好きにしろよ」
 そう聞いてみたが、やはり答えは帰ってこなかった。
「何とか言えよ? 全く……俺は逃げも隠れもしないから、警察呼びたいならいつでも呼んでくれ」
 そう言って裕也は帰っていく。帰る途中、裕也はCOCOAで綾乃にメッセージを帰る旨の送り、電車に乗って自分の家へと戻っていった。
「あの、本当に警察呼ばなくて大丈夫なんですか? なんなら、呼びますけれど」
 裕也と北条家のやり取りを見ていたお隣さんは、あまりの惨状に心配になって警察を呼ぶべきだと考える。
「いい……呼ぶな。家の恥だ……」
 しかし、男たちはやはり自分達に分がないことは自覚しているのか、男たちは警察を呼ぶことを嫌がった。せめて救急車でもといわれたが、それも拒否されるのであった。

 一方、家の中では……
「綾乃……貴方、どうしてあんなことを……」
 二人きりになったところで、母親が娘と一対一で話す。極度の興奮状態で心臓が疲れ果ててしまったのか、綾乃は立つことも出来ず、床に座ったまま涙を流している。負っている傷を見れば、泣きたいのは男たちの方であろうが、彼女が負ってきた心の傷を考えれば無理はない。
「私、知らなかったの。普通の家では、家事は男も女もやるもんだって……普通の家じゃ、おしりや胸を触られることを怯える必要もないって……家事を断っても、頬っぺたつねってきたりしないし、その光景を笑ったりもしないって。あいつら、ウチが普通だって言ってたけれど、全部嘘じゃん……」
「だからってあそこまでやらなくても……」
「さっきも言ったでしょ……二度と逆らう気も起きないくらいに徹底的にやらないとダメなんだ。今度は殺されると思うまで……あれだけやれば、きっと……もう次はないって理解したはず」
 綾乃はそう言って、鼻をぐずった。
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