138 / 423
第7章:男になりたい?
19話
しおりを挟む
一方、家の外に出ていた裕也はといえば、隣の家まで響く悲鳴を聞きつけ、焦って顔を出したお隣さんと話をしていた。
「何があったの……? あなたは誰なの? 警察、呼んだほうがいいの!?」
「えーとですね。多分、呼ばないほうがいいと思いますよ……今ですね、この家の娘である綾乃さんが、ちょっと家族の男たちにお仕置してるんです」
「お仕置って……これでちょっとなの?」
「……まぁ、そう思うのも無理はないですね。ただですね、この家、こんな感じなんです」
裕也は先日撮影したものを編集した動画を見せる。料理を命令されて、拒否したら頬っぺたをつねられたこと。尻を触られたこと。食べ終わったらごちそうさまも言わずに後片付けも全て綾乃に任せていること。編集で重要なところだけまとめたものをお隣さんのおばさんに見せる。
「酷いでしょ? で、俺が一肌脱いで、このエロおやじの頬っぺたをこう、ギューッとつかんで……娘にしたことと同じことをしながら、『お金頂戴』って言ってやったわけよ。俺は冗談のつもりだったけれど、他人の俺がやると犯罪なんだって、警察呼ぶって息巻いていたよ」
「えぇ? そりゃ、犯罪でしょう……」
「そうかもしれないね。まぁ、確かに今あなたに同じことをやったら犯罪かもしれませんが? でも、あいつらの言うところによれば、他人がやれば犯罪でも、家族がやれば犯罪じゃないんだって……だから、娘に対してこういう風に頬っぺたをつねっても犯罪じゃないみたいですよ? でも逆に、自分が娘から犯罪をされた場合も、同じことを言えるといいですが」
家の中では父親の叫び声は聞こえてこなくなったが、次は中学生の弟の悲鳴が響き渡る。『ごめんなさいごめんなさい』と必死に謝っているが、綾乃は聞く耳を持っていないようだ。なにせ、弟も綾乃の尻や胸を触ってきた。いずれ服を無理やり脱がされて襲われると思うと、今ここで徹底的に叩きのめさなければいけない。
「みんな、家族がやれば犯罪じゃないって言葉、後悔していないといいですよね。今、娘さんが大暴れしてるんです」
綾乃の弟の悲鳴を聞きながら、そう言って裕也はため息をつく。
やがて、弟の悲鳴も聞こえなくなったと思ったら、不意に玄関のドアが開く。
「出てけ! 今日は帰ってくるな!」
綾乃は祖父の体を何度も何度も蹴り飛ばし、庭から家の門まで追い立てる。そして、血まみれになったシャツをめくりあげた綾乃は、その傷口に催涙スプレーを吹きかけた。追い出された祖父が悶絶する。
当然のことながら、催涙スプレーの影響でまだ目はあけられていないし、涙がとめどなく流れている。
「おいおい、何泣いてるんだ? 減るもんじゃないだろ? 冗談でスプレーかけただけなのに、そんなんで泣くだなんて情けないなぁ」
そんな祖父に、裕也は録音されていた彼のセリフのオマージュを投げつけてやった。
「綾乃ちゃん! えっと、その恰好は……?」
「あぁ、催涙スプレー使ったんで、ガスマスクつけてるんです……そっか、もう外しても大丈夫か……」
肩で息をしながら綾乃はガスマスクを外す。髪の毛が汗で濡れていた。綾乃はそれ以上お隣さんと会話することもなく、再び家に入っていくと、弟の耳をつまみ上げながら祖父と同じように家から追い出した。
「ちょっと催涙スプレーかけたくらいで、大袈裟だなぁ。弟さん、雑魚すぎ。泣けば許してもらえると思ったの?」
裕也はこれまた同じように、弟へ向けて自信のセリフのオマージュを投げつけてやる。弟は本気で声を上げて泣いている。裕也に言い返す気力もないようだ。
そして、最後は父親だ。父親を外にたたき出し、皮膚が裂けた傷口に催涙スプレーをくれてやった後は、玄関のドアを閉めるとともに、チェーンロックまでかけて完全に締め出した。雨戸も閉まっているので、戸締りはもう完了しているようだ。巨大なハンマーでも持ってくればわからないが、家に入ることは不可能だろう。
「おいおい、泣くなよー。綾乃ちゃんが悪いことしたみたいじゃないか」
最後に裕也は父親に向かってそう言ってやる。
「く……お前、覚えてろよ……これは犯罪だぞ?」
「何があったの……? あなたは誰なの? 警察、呼んだほうがいいの!?」
「えーとですね。多分、呼ばないほうがいいと思いますよ……今ですね、この家の娘である綾乃さんが、ちょっと家族の男たちにお仕置してるんです」
「お仕置って……これでちょっとなの?」
「……まぁ、そう思うのも無理はないですね。ただですね、この家、こんな感じなんです」
裕也は先日撮影したものを編集した動画を見せる。料理を命令されて、拒否したら頬っぺたをつねられたこと。尻を触られたこと。食べ終わったらごちそうさまも言わずに後片付けも全て綾乃に任せていること。編集で重要なところだけまとめたものをお隣さんのおばさんに見せる。
「酷いでしょ? で、俺が一肌脱いで、このエロおやじの頬っぺたをこう、ギューッとつかんで……娘にしたことと同じことをしながら、『お金頂戴』って言ってやったわけよ。俺は冗談のつもりだったけれど、他人の俺がやると犯罪なんだって、警察呼ぶって息巻いていたよ」
「えぇ? そりゃ、犯罪でしょう……」
「そうかもしれないね。まぁ、確かに今あなたに同じことをやったら犯罪かもしれませんが? でも、あいつらの言うところによれば、他人がやれば犯罪でも、家族がやれば犯罪じゃないんだって……だから、娘に対してこういう風に頬っぺたをつねっても犯罪じゃないみたいですよ? でも逆に、自分が娘から犯罪をされた場合も、同じことを言えるといいですが」
家の中では父親の叫び声は聞こえてこなくなったが、次は中学生の弟の悲鳴が響き渡る。『ごめんなさいごめんなさい』と必死に謝っているが、綾乃は聞く耳を持っていないようだ。なにせ、弟も綾乃の尻や胸を触ってきた。いずれ服を無理やり脱がされて襲われると思うと、今ここで徹底的に叩きのめさなければいけない。
「みんな、家族がやれば犯罪じゃないって言葉、後悔していないといいですよね。今、娘さんが大暴れしてるんです」
綾乃の弟の悲鳴を聞きながら、そう言って裕也はため息をつく。
やがて、弟の悲鳴も聞こえなくなったと思ったら、不意に玄関のドアが開く。
「出てけ! 今日は帰ってくるな!」
綾乃は祖父の体を何度も何度も蹴り飛ばし、庭から家の門まで追い立てる。そして、血まみれになったシャツをめくりあげた綾乃は、その傷口に催涙スプレーを吹きかけた。追い出された祖父が悶絶する。
当然のことながら、催涙スプレーの影響でまだ目はあけられていないし、涙がとめどなく流れている。
「おいおい、何泣いてるんだ? 減るもんじゃないだろ? 冗談でスプレーかけただけなのに、そんなんで泣くだなんて情けないなぁ」
そんな祖父に、裕也は録音されていた彼のセリフのオマージュを投げつけてやった。
「綾乃ちゃん! えっと、その恰好は……?」
「あぁ、催涙スプレー使ったんで、ガスマスクつけてるんです……そっか、もう外しても大丈夫か……」
肩で息をしながら綾乃はガスマスクを外す。髪の毛が汗で濡れていた。綾乃はそれ以上お隣さんと会話することもなく、再び家に入っていくと、弟の耳をつまみ上げながら祖父と同じように家から追い出した。
「ちょっと催涙スプレーかけたくらいで、大袈裟だなぁ。弟さん、雑魚すぎ。泣けば許してもらえると思ったの?」
裕也はこれまた同じように、弟へ向けて自信のセリフのオマージュを投げつけてやる。弟は本気で声を上げて泣いている。裕也に言い返す気力もないようだ。
そして、最後は父親だ。父親を外にたたき出し、皮膚が裂けた傷口に催涙スプレーをくれてやった後は、玄関のドアを閉めるとともに、チェーンロックまでかけて完全に締め出した。雨戸も閉まっているので、戸締りはもう完了しているようだ。巨大なハンマーでも持ってくればわからないが、家に入ることは不可能だろう。
「おいおい、泣くなよー。綾乃ちゃんが悪いことしたみたいじゃないか」
最後に裕也は父親に向かってそう言ってやる。
「く……お前、覚えてろよ……これは犯罪だぞ?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる