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第7章:男になりたい?

14話

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「ダメに決まってるじゃない。そもそも大丈夫じゃ意味ないの。大丈夫じゃない事になるから、人は学習する。蜂に刺されても蚊に刺された程度だったら、人はスズメバチを怖がらないでしょ? あなたはスズメバチになりなさい。次に刺されたら死ぬと思わせるくらい、危険で大丈夫じゃない存在になるの」
「えっと……」
 言葉の意味は分かるがしかし、自分とはあまりに常識の違う考え方を語られて、綾乃は硬直してしまう。
「貴方が現状のまま、男たちの奴隷なままでいいのならば、私は別にこんな訓練しなくてもいいと思うけれど……あなたはそれでいいのね? 私は、自分も頑張っている人なら助けたいとは思うけれど、頑張っていない人は救おうと思えない……貴方が救われたくないのなら、私もこれ以上無理強いはしない」
 まごついている綾乃を見て、冷たく突き放すようなことを明日香は言う。
「つっても、俺もきちんと手助けはする。お前が危なくなりそうになったら助けるし、サポートもする……けれど、綾乃さん自身が戦う気概を見せなきゃ、俺達が助けることができない時に畳みかけられちゃうし……俺らが全て片づけちゃったら、俺らのいないところで、奴らが君に手を出したら意味がないだろ? だから、君が、奴らに二度と逆らおうと思わないくらいに傷めつけないと、意味がないんだ」
「でもそれって犯罪なんじゃ……」
 綾乃は当たり前の心配をするが、裕也は心配する必要はないと笑う。
「は、気にするな。今のあんたは少年法で守られているんだから。いいか、少年法はな? 子供には経済的な状況などの関係で、いかんともしがたい事情があって犯罪を犯したことを想定した法律なんだ。あなたは、まだ高校生……就職してお金を貯めて逃げるなんてのは難しい。そういう状況でなら、多少の犯罪だって許される。たとえ、法が許さなくとも世間が許すさ」
 裕也は悪魔のささやきを綾乃に告げる。
「そもそも、奴らがやっていることのほうがよっぽど犯罪でしょ?」
 明日香の言葉に対して綾乃は何も言わずに頷く。今までならここで終わりだったかもしれないが、もう一人、綾乃と似たようなことを経験した真由美まで、悪魔のささやきに加わってくる。
「……綾乃さん。私も、父親に苦しめられてきた口でした。世の中の男性が全員そうだというわけではありませんが、世の中には弱い相手にはとことん威張るようなゴミがいます。そういう奴は徹底的に。それこそ、死ぬんじゃないかと思うくらいの恐怖を与えないとダメです。
 私の父親は、太ももをナイフで刺されて、ようやく自分がそれだけ恨まれていることを学習しました。だから、綾乃さん……貴方も、命乞いをされてからが本番です。殺す寸前まで追いつめるまでは、絶対に手を緩めちゃだめです」
 以前は裕也や明日香の乱暴な思考についていけなかった彼女がこれほどまでに言う。普段はおとなしそうな真由美が憤るあたり、綾乃の祖父の振る舞いがそれほど癪に障ったようであった。
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