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第7章:男になりたい?
12話
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その様子を、仕掛けたカメラがきっちり捉えていた。当然、古々も一緒に見ていたのだが、彼女の怒りはすさまじいものであった。翌日相撲部の面々でカメラの映像を見ているだけで、皆顔が険しくなってしまっている。
『こんな仕打ちを受けていたら、男性不信になることは確実……彼女の人生の可能性を大きく閉ざして、多くの機会を失わせる愚行だわ……あの男たちはこれ以上、一秒たりとも女性に関わって欲しくない……。なんであんな男が結婚できるのかと思うくらい邪悪な存在よ』
古々の言葉が容赦なくボロクソだ。
「ひでえな、こりゃ」
古々に応える形で、裕也は動画を見ながらそう言った。明日香も『ほんとね』と同意して頷く。真由美は少し前までの自分を思い出して、思わず目を逸らしたし、素華は頭に血が上って痒いのか、頭をガリガリと掻いている。皆が憤っている間も動画は続いていて、料理中の画面……裕也たちは早送りで飛ばそうとしていたところで……
「……たしか、この時。じゃがいもを切っている時なんだけれど。あぁ、ここ」
綾乃の体につけていた小型カメラはただ料理をしているところしか映っていないが……動画の中では
『ひゃっ……料理中に触るのはやめてよ』
『いいだろ? ケツ触られたくらいで減るもんじゃねえんだから』
『減らなくても嫌なものは嫌なの!』
『お高く留まりやがって。さっき反抗的な態度を取ったんだから、お詫びに少しくらい揉ませるとかしたらどうだ?』という綾乃と祖父の会話が聞こえてくる。その映像を見た相撲部員は言葉を失っている。自分の孫でありながら、性的な目で見るなどというのはまぁ、仕方がないこともあるかもしれないが。だからと言って実際に手を出すことなど、許されるものではない。明日香と裕也はもちろん、素華や真由美まで義憤に駆られ、『何とかしてあげたい』、という気持ちが芽生えてしまう。
そして、このカメラの映像を持ってきた綾乃の顔は酷いものだ。映像の中でつねられていた頬は、青く痣がついている。痛みに対する恐怖のせいで、綾乃が何をされても逆らえないようにコントロールしているのだから、親の資格がないというレベルでは済まない。
「祖父はよく私の尻を触ってきたりして……あと、以前風呂を覗いてきたこともありました……」
その後も、早送りを交えて隠しカメラの映像を見終わったところで、相撲部の一行は大きくため息をついた。
「で……どうやって始末つける? さすがにバット持って殴打とかはまずいしなぁ」
明日香の目が座っている。静かに怒りを湛えた彼女は、もう言葉から殺気を隠すことすらしない。
「そうだな、あの爺さんに『お金ちょうだい』って、言いながらこう……つねってみるのはどうだ? あいつらにとってはつねるのは冗談らしいから、あくまで冗談でつねる」
裕也は言いながら明日香の頬を軽くつねる。相撲部で鍛えた握力だ。そのうえ、鍛えようのない頬っぺた。本気を出せば明日香でも涙目になるほどには強烈な痛みだろう。
「そうね、相手にとっては冗談でつねっているだけみたいだし……でも、それだけじゃ不十分ね」
明日香は裕也の手をやんわりと払いのけながら、相変わらずの不機嫌そうな顔で言う。
「買ったはいいけれど使い道なかったあれで行くか」
「あれって?」
名案を閃いた明日香に裕也が尋ねる。どうせろくなものではないだろう、と裕也は薄々勘づいていた。
『こんな仕打ちを受けていたら、男性不信になることは確実……彼女の人生の可能性を大きく閉ざして、多くの機会を失わせる愚行だわ……あの男たちはこれ以上、一秒たりとも女性に関わって欲しくない……。なんであんな男が結婚できるのかと思うくらい邪悪な存在よ』
古々の言葉が容赦なくボロクソだ。
「ひでえな、こりゃ」
古々に応える形で、裕也は動画を見ながらそう言った。明日香も『ほんとね』と同意して頷く。真由美は少し前までの自分を思い出して、思わず目を逸らしたし、素華は頭に血が上って痒いのか、頭をガリガリと掻いている。皆が憤っている間も動画は続いていて、料理中の画面……裕也たちは早送りで飛ばそうとしていたところで……
「……たしか、この時。じゃがいもを切っている時なんだけれど。あぁ、ここ」
綾乃の体につけていた小型カメラはただ料理をしているところしか映っていないが……動画の中では
『ひゃっ……料理中に触るのはやめてよ』
『いいだろ? ケツ触られたくらいで減るもんじゃねえんだから』
『減らなくても嫌なものは嫌なの!』
『お高く留まりやがって。さっき反抗的な態度を取ったんだから、お詫びに少しくらい揉ませるとかしたらどうだ?』という綾乃と祖父の会話が聞こえてくる。その映像を見た相撲部員は言葉を失っている。自分の孫でありながら、性的な目で見るなどというのはまぁ、仕方がないこともあるかもしれないが。だからと言って実際に手を出すことなど、許されるものではない。明日香と裕也はもちろん、素華や真由美まで義憤に駆られ、『何とかしてあげたい』、という気持ちが芽生えてしまう。
そして、このカメラの映像を持ってきた綾乃の顔は酷いものだ。映像の中でつねられていた頬は、青く痣がついている。痛みに対する恐怖のせいで、綾乃が何をされても逆らえないようにコントロールしているのだから、親の資格がないというレベルでは済まない。
「祖父はよく私の尻を触ってきたりして……あと、以前風呂を覗いてきたこともありました……」
その後も、早送りを交えて隠しカメラの映像を見終わったところで、相撲部の一行は大きくため息をついた。
「で……どうやって始末つける? さすがにバット持って殴打とかはまずいしなぁ」
明日香の目が座っている。静かに怒りを湛えた彼女は、もう言葉から殺気を隠すことすらしない。
「そうだな、あの爺さんに『お金ちょうだい』って、言いながらこう……つねってみるのはどうだ? あいつらにとってはつねるのは冗談らしいから、あくまで冗談でつねる」
裕也は言いながら明日香の頬を軽くつねる。相撲部で鍛えた握力だ。そのうえ、鍛えようのない頬っぺた。本気を出せば明日香でも涙目になるほどには強烈な痛みだろう。
「そうね、相手にとっては冗談でつねっているだけみたいだし……でも、それだけじゃ不十分ね」
明日香は裕也の手をやんわりと払いのけながら、相変わらずの不機嫌そうな顔で言う。
「買ったはいいけれど使い道なかったあれで行くか」
「あれって?」
名案を閃いた明日香に裕也が尋ねる。どうせろくなものではないだろう、と裕也は薄々勘づいていた。
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