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第6章:自分のために
15話
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「こうやって手を清めた後は口の中を清めて、最後にひしゃくの柄を清めるんです。それでですね……」
当たり障りなく参拝の方法を教えて、最後に拝殿にて賽銭を行う作法を説明する。
「まずは鈴を鳴らしてから、お賽銭を入れます。その後は二礼二拍手、一礼と言いまして、姿勢を正してからお辞儀を二回、胸の前で手を合わせてからパンパンと二回拍手。そして一礼をして参拝を終了します」
「わかりました」
恭平は見よう見まねで明日香と同じ動作をする。ぎこちなかったが、動きは及第点といったところか。
『雑念が多いな……お前への下心でいっぱいだぞ』
振々に言われ、『やっぱりそうなるか』と明日香は苦笑する。
「ねぇ、ところで明日香ちゃん。明日香ちゃんって、恋人とかいるの?」
「え? あ、はい、いますよ……同級生の相撲部で……とっても強くて頼もしいんです。私と一緒に人助けをしているんですよ」
「ぐ、そ、そう……?」
当てが外れたと思ったのか、恭平は眉をひそめた。
「ねぇ、俺のこと、誘ってたんじゃないの?」
「いや、誘ってません。あ、でも、もしよければ一緒に人助けやりません? お参りする人を増やせば神様喜びますし」
なおも食い下がる恭平に、明日香は必死で愛想笑いをしながら鈍感なふりして無関心をアピールする。しかし、そういう時にタイミング悪く客人も来るものだ。
『おい、こっちに古々が来る。裕也君と一緒にな。今、階段を上っている』
「……あ、恋人が来ました! やっほー、裕也君!」
さっき恭平に言ったことが嘘とバレるのは困るので、明日香は裕也の姿が見える前から裕也のほうへ駆け寄り、嬉しそうな声を上げる。
「え、何!?」
「今ちょっと恋人のふりして!」
事情を説明する暇もないので、明日香は裕也に抱き着くと耳打ちし、そのままぎゅっと抱きしめられた体勢を取る。
「よくわからんけれど、わかった」
裕也は恐る恐る明日香を抱きしめた後、しばらくして彼女を放す。
『すまんな、ちょっとあの男が明日香が自分に惚れていると思い込んでいるから、勘違いしないように恋人がいるようにしてほしくてな……』
「わ、わかった」
振々に事情を知らされて裕也は小さく頷いた。
「恭平さん、この人が私の彼氏の三橋裕也君です。一緒に人助けやってます! 裕也君、この人が以前話してたブラック企業に勤めてて、小型カメラ貸した人で……」
「ど、どうも」
裕也はいきなり気まずい雰囲気に放り込まれながら、恭平にお辞儀をした。
「あ、そうなんですね。では、俺はこれで帰ります……」
恭平は裕也にぞっこんとでもいうべき明日香の態度を見て、これは完全に、脈なしなのだとようやく気が付いた。
「はい、またお参りに来てくださいねー」
最後の明日香の言葉がただただ悲しかった。
当たり障りなく参拝の方法を教えて、最後に拝殿にて賽銭を行う作法を説明する。
「まずは鈴を鳴らしてから、お賽銭を入れます。その後は二礼二拍手、一礼と言いまして、姿勢を正してからお辞儀を二回、胸の前で手を合わせてからパンパンと二回拍手。そして一礼をして参拝を終了します」
「わかりました」
恭平は見よう見まねで明日香と同じ動作をする。ぎこちなかったが、動きは及第点といったところか。
『雑念が多いな……お前への下心でいっぱいだぞ』
振々に言われ、『やっぱりそうなるか』と明日香は苦笑する。
「ねぇ、ところで明日香ちゃん。明日香ちゃんって、恋人とかいるの?」
「え? あ、はい、いますよ……同級生の相撲部で……とっても強くて頼もしいんです。私と一緒に人助けをしているんですよ」
「ぐ、そ、そう……?」
当てが外れたと思ったのか、恭平は眉をひそめた。
「ねぇ、俺のこと、誘ってたんじゃないの?」
「いや、誘ってません。あ、でも、もしよければ一緒に人助けやりません? お参りする人を増やせば神様喜びますし」
なおも食い下がる恭平に、明日香は必死で愛想笑いをしながら鈍感なふりして無関心をアピールする。しかし、そういう時にタイミング悪く客人も来るものだ。
『おい、こっちに古々が来る。裕也君と一緒にな。今、階段を上っている』
「……あ、恋人が来ました! やっほー、裕也君!」
さっき恭平に言ったことが嘘とバレるのは困るので、明日香は裕也の姿が見える前から裕也のほうへ駆け寄り、嬉しそうな声を上げる。
「え、何!?」
「今ちょっと恋人のふりして!」
事情を説明する暇もないので、明日香は裕也に抱き着くと耳打ちし、そのままぎゅっと抱きしめられた体勢を取る。
「よくわからんけれど、わかった」
裕也は恐る恐る明日香を抱きしめた後、しばらくして彼女を放す。
『すまんな、ちょっとあの男が明日香が自分に惚れていると思い込んでいるから、勘違いしないように恋人がいるようにしてほしくてな……』
「わ、わかった」
振々に事情を知らされて裕也は小さく頷いた。
「恭平さん、この人が私の彼氏の三橋裕也君です。一緒に人助けやってます! 裕也君、この人が以前話してたブラック企業に勤めてて、小型カメラ貸した人で……」
「ど、どうも」
裕也はいきなり気まずい雰囲気に放り込まれながら、恭平にお辞儀をした。
「あ、そうなんですね。では、俺はこれで帰ります……」
恭平は裕也にぞっこんとでもいうべき明日香の態度を見て、これは完全に、脈なしなのだとようやく気が付いた。
「はい、またお参りに来てくださいねー」
最後の明日香の言葉がただただ悲しかった。
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