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第6章:自分のために

11話

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「多分、訴えれば勝てると思いますが……油断しちゃだめです! 古々はより万全を期すために、上司を懲戒解雇や降格に持ち込めるように、お医者さんに行きましょうよ。うつ病診断させれば上司を悪者にできますし……あと、社長とか人事とか、上司の上司も巻き込めばいいと思います。恥ずかしがることはありません、会社のガンを取り除けば、むしろあなたは英雄になれます。
 英雄になるためには絶対に退いちゃダメ……でも、一人で戦うのは難しいから、きちんとプロを雇いましょう。この近くにも弁護士事務所があるから、まずはそこに無料相談をしてみるのも手だと思う。近いほうが行きやすいですし」
 明日香の家は駅から近いこともあって、弁護士事務所が一つ、歩いていける距離にある。
「あ、あぁ……じゃあ、日曜日に」
「日曜日って、今日はよりによって月曜日じゃないですか。時間かかりますから、明日有給申請して水曜日に休みましょう」
「有給なんてそんなの許してもらえるわけ……」
「いいじゃない。有給休暇を正当な理由なしに断ると……えーと……」
 明日香はスマートフォンを起動し、有給休暇について調べる。
「ふむふむ、きちんと書いてある。繁忙期とか決算で本当に余裕がない時ならともかく、平時では有休を申請された場合は基本的に断ることはできず、日付の変更くらいしかできない。拒否をすると、六か月以下の懲役または三十万円以下の罰金……いいじゃない、上司をさらに追い込める。
 『そもそも、貴方の代わりはいくらでもいる』ってお墨付き貰っているんじゃない? 有給を拒否されても拒否されなくても、貴方の勝ちよ。引いちゃだめだからね……明日の朝一、上司に掛け合いなさい。それでもだめなら、明日の昼、私が通話で応援してあげるから、12時から13時の間、電話に出なさい。必ずよ」
「え、えぇ?」
「やりなさい。ってか、やれ。貴方は、会社のためじゃなく自分のために頑張りなさい」
 強い口調で命令され恭平は戸惑うほかない。
「わ、か、……たよ」
 ここまで押されては拒否することも難しく、恭平は仕方なしに頷くことになってしまった。その日はそのまま帰った恭平だが、家に帰って考えれば考えるほど、明日香の言う通りなのだ。別に今回は有給を取れなくてもいい、有給を拒否されたとしても、拒否されたことが武器になるのだ。
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