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第6章:自分のために
6話
しおりを挟む「よし、じゃあ、あれだ! こうなったら最終手段! 今後も仕事を続けられるように、ポジティブに考えられるようなお守りを持ってきますね」
しかし、そんな男に対して諦めることなく明日香は提案する。
「お守りなんて……そんなものに意味なんて」
「大丈夫です、意味はあります!」
明日香は断言して自室へと消えていった。何をされるのやらと不安になりながら男が待っていると、明日香はボールペン、腕時計、ネクタイピンを持ってくる。
「これは? 何かの文房具……?」
「小型カメラ付きボールペンと、小型カメラ付き腕時計と、小型カメラ付きネクタイピンです」
「えっと」
「これから、サービス残業はサービスじゃなくなります。嫌がらせや小言も、やられるたびに慰謝料という名の給料が発生します。それらを証拠として突きつければ、貴方の上司は、上司の上司に厳重注意されて、あなたへの口出しもしにくくなります。ですから、あと数日、耐えてください。私が手助けしますから!」
「えー……うん」
明日香の勢いに押され、男は思わずうなずいてしまった。
「では、使い方なんですが……まずはこの……」
明日香は男に小型カメラの使い方を教える。
「こんなんで大丈夫なのかな?」
「大丈夫です。これは私の友人からプレゼントされたものなんですが、私の友人はこれを使っていじめを解決したり、ご近所トラブルを解決したりしてますので……お守りとしての効果はかなり高いと思いますよ」
なぜ明日香がこんなものを持っているのかといえば、つまりはそういうことである。百合根が相撲部入りを決意した際、何かの時に使えと百合根からプレゼントされたものである。
「録画、録音したものを持ってきていただければ、私がそれを適切に処理しますので、お兄さんは録画したものを持ってきてくださいね。ほんと、録画するだけでいいので」
「……わかったよ」
お守り、というと大袈裟な表現をすれば大半がスピリチュアル系のアイテムである。実際に効果があるかどうかなど、半信半疑だったり全くあてにしていない者が大半だろう。実際この男もそうだったのだが、思ったよりも実用的そうなお守りを渡されたおかげで、これなら大丈夫かもしれないと淡い希望を抱いている。
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