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第6章:自分のために

3話

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「良かったよ兄ちゃん、最近落書きされてて困ってたんだ」
「いやー。ありがたいねぇ。でも、高校生がこんな時間にうろつくのは感心しねぇなぁ……こんな危険なことをしちゃだめだよ」
「ありがとう、迷惑してたのよ。勇敢ねぇ」
「これでこいつに弁償させられるな」
 おじいさん、おばあさん、おじさん、おばさんばっかりで若い人がいない。今どき商店街で働いているのはこんなものらしい。だから落書き犯に舐められているのか、と思うと悲しい事実だ。褒められたし、悪い奴を一人懲らしめることが出来たのは嬉しいが、この分じゃまた狙われるんじゃないかと思うと少し心配だ。
「ど、どういたしまして……」
 裕也は口々に褒められ、少々はにかみながら言う。
「俺、神からのお告げみたいなことがありまして……それで、ちょっとあたりを見回してみたらこんな感じになったんです。……というのも、近くにある大津井鹿島神社から、人助けをするようにっていうお告げをうけとったので。なので、皆さん……俺へのお礼は構いませんが、もしよければ神社へ行ってお参りするとか、ここからでもいいので神に感謝をささげてくださると嬉しいです。俺、そこで相撲部やってるんですよ」
 などと裕也が行ってみると、商店街の人達は目を丸くした。今どき商店街で店を開いている人は年配の人ばかりだが、そんな人たちでももう、お祭りやお正月でもなければお参りを熱心に行くような人は貴重である。
 お参りしてほしい、というお願いをする人間は奇特に映る事だろう。
「ま、まぁ君がそういうのなら……」
「そんなことでいいのなら……」
『変人って思われたみたいね、うふふ』
 そんな、変わり者という印象を受けた裕也はバツが悪そうに苦笑する。しかしながら、古々が言う守護霊としての役割というのは確かに役に立つような気がする。他人の気持ち、強い感情というものを察知できる古々の力があれば、人間関係を円滑に進めたり、機嫌の悪い人を避けることもできるだろう。
 百合根が言っていた通り、古々が何かをたくらみ、自分達を何らかの形で騙している可能性を否定はできないが、古々との関係は今のところ良好なのだ。彼女といつまでも仲良くなれますようにと、彼は古々のほうを見て改めて思う。
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