ハーレム相撲部～女4人に男1人。おまけにかわいい守護霊も憑いてきて、一体何がどうしてこうなった？～

第6章：自分のために

2話

『今通り過ぎた男がその怪しい感情を纏っている奴よ……周囲のことをよく気にしているけれど、一体何をするつもりなのかしらねぇ？』
　古々に言われ、裕也は物陰に身を隠した。無言でな成り行きを見守ろうとしたら、古々は私が代わりに見てあげるからと、裕也を引っ込ませた。しばらく待っていると、男はスプレーを使ってシャッターに落書きをしているようであった。裕也は古々に指示されるがまま、壁から手だけを出してその様子をスマートフォンで録画する。
　しばらくして十分な証拠を録画した裕也は、スマホケースを八の字にすることで地面にスマホを立てて固定カメラにする。そして、一度深呼吸をすると全力でペダルを漕いで相手の自転車へ突撃する。驚いて自転車に乗って逃げようとするも、裕也が自転車を蹴り倒してそれを阻止する。
「お前何やってるんだ？　落書き？」
「く、来るんじゃねえ！　殺すぞ！」
　男は裕也の登場に驚くと、スプレーを構えて後ずさりする。スプレーで目潰しをされたら、さすがの裕也も隙が出来て、目が見えないうちに殴られでもすればダメージは避けられない。
『援護しようかしら？　お望みなら目の周りの筋肉をバチバチってやって、隙を作るけれど』
「大丈夫、いらない」
　古々に援護を打診された裕也だが、彼は事前の話し合い通り相手が乗ってきた自転車を持ち上げると、それを相手に放り投げる。相手の男は後ずさって避けようとするも間に合わず、スプレーを構えていたせいで受け止めることも出来ず、そのまま地面に尻餅をついた。
　裕也はそのまま自転車ごと相手を踏みつけ拘束する。スプレー缶は音を立てて転げていった。スプレーから揮発していった有機溶剤の匂いに顔をしかめながら、裕也はまだ苦しみ呻く男の上から自転車をどけ、手首を強引に引っ張り上げて立ち上がらせた。
「この商店街の落書き、お前の仕業なの？」
「あ、え、いや……」
　突然のことで事態が把握しきれていない男はどもってしまうが、証拠はすでに映像で残っている。言い逃れは不可能だ。
「まぁ、ちょっと来い。警察呼ぶから。おーい、誰かー！　落書きの犯人を捕まえたぞー！　縄を持ってきて警察呼んでくれー！」
　裕也は大声で叫び、警察と地元住民を呼んだ。警察の到着を待つ間裕也は大声をあげて商店街の人達を集め、万が一にも相手を逃げられないように人を集めた。人が集まると、スマートフォンで撮影した映像を見せ、捕らえた男がどういう人間であるかは皆に周知させた。