102 / 423
第5章:相撲部、復活
24話
しおりを挟む
「あと、これも話しちゃっていいかな……こっちは本当にプライベートにかかわるお話なんだがな。俺がこうして一人暮らししているのは、総一郎さんの計らいのおかげなんだ。ヤクザに育てられたことが知られれば、将来の就職に邪魔になるかもしれないから、ヤクザの家で育てられたことは秘密にしとけって言われて……今は匿名で総一郎さんが俺にお金を送ってくれてる。この家も、そのお金があるから住んでいられるんだ」
『へぇ……就職に邪魔、かぁ。確かにそうね。親戚にヤクザがいると、就職には不利だろうし……だから今、あなたは一人暮らしなのね』
「そういうこと。本当は木村家も居心地は悪くなかったから……俺はもっと居たかったんだけれどさ。もしかしたら、家族じゃない部外者の俺が疎ましかったんじゃないかと思うこともあって、今でも少し惨めな気分になるよ」
『……確かに、建前ってこともあるかもだし、ね。でも、きっと一人暮らしは愛しているからこその決断よ』
話しているうちに惨めな気分を思い出した裕也を古々は励ます。
「だといいけれどな。俺だって頭じゃわかってるんだ。百合根も昔は自分がヤクザの子供だってことをバレないようにしてて引っ込み思案だったから、総一郎さんの判断は間違っていないと思う……って」
『そうよ。今もお金を送って援助しているのなら、愛していないわけはないわ……しかし、百合根ちゃんが引っ込み思案って、本当に? なんか想像できないわ』
「いやぁ、だって百合根はあの見た目だろ? 親がフィリピン人だからな、日本人っぽくないから、目立たないようにしてたんだ。絶対に目立ちたくないから、親がヤクザだってことも隠していたんだ……でも、あるきっかけで、悪人退治にはまっちまったんだ。以前のいじめの解決みたいな感じでさ」
『今は、あっけらかんとしながらヤクザであることを周囲に漏らしているけれど……何かあったのかしら? それに、中学二年生ごろに、あの子は人が変わったような……』
「そいつは言えねえよ。あいつも、色々苦労してるし……百合根が話したくなったら聞いてもらうしかない。ただ、時々考えるんだよなぁ。今とあの時、百合根はどっちのほうがいいのか、正直……考えちまうよ。百合根に感謝してるやつも多い。百合根を恨んでいるのは全員悪党だ。
だからと言って、百合根がやっていることは犯罪まがいのことも多いし……いつか恨みを買ったやつに刺されたり、警察のお世話になるんじゃないかって、すごく心配なんだ。
百合根の親父さん、娘には苦労させないようにヤクザの世界には関わらせないようにしてたんだけれど、百合根はどんどん関わろうとしてくるから……」
裕也はため息をつく。何度か百合根の行動に助けられたこともあるとはいえ、やはり知らない中ではない相手がヤクザのまねごとをしていると、役に立つかどうかよりも身の危険がないか心配になってしまう。それは親子ほど深い間柄ではなくとも、同じことだ。
『へぇ……就職に邪魔、かぁ。確かにそうね。親戚にヤクザがいると、就職には不利だろうし……だから今、あなたは一人暮らしなのね』
「そういうこと。本当は木村家も居心地は悪くなかったから……俺はもっと居たかったんだけれどさ。もしかしたら、家族じゃない部外者の俺が疎ましかったんじゃないかと思うこともあって、今でも少し惨めな気分になるよ」
『……確かに、建前ってこともあるかもだし、ね。でも、きっと一人暮らしは愛しているからこその決断よ』
話しているうちに惨めな気分を思い出した裕也を古々は励ます。
「だといいけれどな。俺だって頭じゃわかってるんだ。百合根も昔は自分がヤクザの子供だってことをバレないようにしてて引っ込み思案だったから、総一郎さんの判断は間違っていないと思う……って」
『そうよ。今もお金を送って援助しているのなら、愛していないわけはないわ……しかし、百合根ちゃんが引っ込み思案って、本当に? なんか想像できないわ』
「いやぁ、だって百合根はあの見た目だろ? 親がフィリピン人だからな、日本人っぽくないから、目立たないようにしてたんだ。絶対に目立ちたくないから、親がヤクザだってことも隠していたんだ……でも、あるきっかけで、悪人退治にはまっちまったんだ。以前のいじめの解決みたいな感じでさ」
『今は、あっけらかんとしながらヤクザであることを周囲に漏らしているけれど……何かあったのかしら? それに、中学二年生ごろに、あの子は人が変わったような……』
「そいつは言えねえよ。あいつも、色々苦労してるし……百合根が話したくなったら聞いてもらうしかない。ただ、時々考えるんだよなぁ。今とあの時、百合根はどっちのほうがいいのか、正直……考えちまうよ。百合根に感謝してるやつも多い。百合根を恨んでいるのは全員悪党だ。
だからと言って、百合根がやっていることは犯罪まがいのことも多いし……いつか恨みを買ったやつに刺されたり、警察のお世話になるんじゃないかって、すごく心配なんだ。
百合根の親父さん、娘には苦労させないようにヤクザの世界には関わらせないようにしてたんだけれど、百合根はどんどん関わろうとしてくるから……」
裕也はため息をつく。何度か百合根の行動に助けられたこともあるとはいえ、やはり知らない中ではない相手がヤクザのまねごとをしていると、役に立つかどうかよりも身の危険がないか心配になってしまう。それは親子ほど深い間柄ではなくとも、同じことだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる