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第5章:相撲部、復活

23話:百合根の思惑は

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 そして、宿題も終わり、裕也はシャワーを浴びて就寝の準備をしながら、今日の出来事を思い出した。
「百合根のやつも俺達と一緒に人助けをしてくれることになったわけだが……あいつ、何考えているんだろうな?」
『貴方たちって、割と仲がいいみたいだけれど、お互いのことは知らないの?』
「いや、知ってるよ。知ってるどころか、一時期百合根とは同じ家に住んでたから兄妹みたいなもんだよ……俺の母親が逮捕されて、ロクでもない親戚に引き取られるか、それとも施設に引き取られるかってときに、俺を家に引き取って、高校生になるまで住まわせてくれたのはあいつの親……木村総一郎さんと、木村ディアンさんだから。百合根というか、木村家には返しきれない恩があるのはもちろんだけれど、それなりに色んな話しもした。でも、家族だとしても話せない本心くらいあるだろ? 百合根に聞きたいことはあったけれど、聞けずじまいだ」
『たとえば、どんな?』
「……プライベートには干渉しないんじゃなかったのか?」
『そう言われると、私もこれ以上深入りは出来ないわねー』
「百合根がお前に直接話してもいいと思ったら、その時に聞けばいいさ。でもまぁ、話せることはあるぜ……たとえば、法律の知識とか、簡単なものだけならいろいろ仕込んでくれた。最近のヤクザってのは暴対法が厳しいから、色々と覚えておけって勉強させるらしい。その勉強に俺も付き合わされたんだ。労働基準法、詐欺や商売に関する法律、罪を犯した時に刑期を短くする方法、結婚や離婚をするときに役立つ法律……ヤクザに関係あるのかどうかもわからないことまで学ばされた」
『そうなの……どうりで、真由美ちゃんのお母さんへの説教がやたら詳しいと思った』
「ヤクザやってると、仕事がどうしても裏稼業だからか離婚問題に発展することも多いとか……そん時に親権をどう取るとかまで教えられたよ。あとは、人の痛めつけ方と、どこを刺せば人が死ぬかも教えられたなぁ……」
 そういえば、裕也は太ももを刺したら最悪死ぬ、などという言葉を口走っていたことも古々は思い出す。
『あらあら、役に立つ知識が増えていいじゃない』
 なるほど、勉強の成果は出ているようだと古々は苦笑した。
「どーだか。被害者になるにせよ加害者になるにせよ、役に立たないでほしい知識も多いよ」
『ふふ、そうね。せっかく結婚するなら夫婦円満がいいものね』
 確かに、太ももを刺すと死ぬとか、離婚の法律とか、知ってても使わないで済んだ方がいい知識が多すぎる。子供になんてことを教えているんだと思うと、おかしくて古々は笑ってしまった。
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