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第5章:相撲部、復活

10話

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 そうして、さらに日にちが進むと、真由美が誇らしげな顔をして相撲部を訪れた。
「……家の共有財産が1500万円ありまして。その半分の750万円と、父親の750万円から300万円の慰謝料で、1050万円。加えて、養育費を由香利が成人するまで、月ごとに10万円……取れることが決まりました。私が刺したせいでちょっと慰謝料は減額されましたけれど、それでも大勝利です」
 離婚時の財産分与及び、慰謝料の協議が終わった彼女は、ようやく戦いが終わったことにご満悦だ。もちろん、この養育費を父親が素直に払うとは思えないのだが、ともかく一応の決着はついた。
「やるじゃん。それを貰ったうえで母親が働けば、それでも暮らしていけるんじゃない? 貴方が大学を卒業するまで、いけるでしょ」
 明日香も思わず笑顔になる。弁護士はサクサクと仕事を進め、これだけの条件を勝ち取ったようだ。妻や子供にしか暴力を振るえない男の権威などたかが知れたもので、法律を味方につけたものへは一切太刀打ちできるようなものではなかった。逆に弁護士は『妻への脅しをかけることは逆にあなたが不利になることをよく覚えておいてくださいね』と、父親に警告をする始末。
「ただ、問題があって、あの家は父親の名義なんですよね。私達、引っ越さなきゃならなくなって……」
「そっか……でも、どこに引っ越すの?」
 明日香が尋ねる。
「それなんですけれど、離婚の準備を進めながら、お母さん就職活動もしていたらしくって。それで、この近くに引っ越してこれそうなんです。妹は転校になってしまいます……小学校が家や職場に近ければ何かあったときに安心だってことで」
「いいじゃないか。あんまり頼りにならなそうな母親だけれど、それでも帰りが遅くなったときとかに助かるな」
 親が近くで働いているのはいいことだと、裕也は頷く。
「ですね。妹もおとなしい子なので、お留守番が危険そうなときは、母さんの職場で勉強でもゲームでもさせておけるので……それに、私もこの学校に通い続けられます」
 真由美は明るく笑みを浮かべる。
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