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第4章:人の痛み
21話
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「分かりました……ですがとにかく、今日を乗り越えるためにも、自分で自分の身を守るためにも、ご指導……お願いします」
真由美が頭を下げる、明日香と裕也は頷くと、神社の片隅で刃物を取り扱う訓練を始めた。真由美は最初こそ裕也のことを恐れて体が動かなかったが、裕也も彼女に危害を与えることはせず、本当に彼女の腕をつかむだけなので、だんだんと冷静に裕也の腕を見るようになる。
すると、真由美の勝率は徐々に上がっていき、めったなことで彼女の腕が捕まれることはなくなってしまう。
「見ての通り、ナイフを持った人間を無傷で制圧するっていうのは本当に難しいのよね。一応武道の経験者の男性である裕也君でも、ど素人である貴方を相手にこのざま……よく、軍隊や警察の演習とか、護身術で相手のナイフを奪う方法とかをやっているけれどね。そういう人たちですら、ナイフに対する一番の対処法は『逃げる』ことだって言うし。貴方の父親は素人でしょ? なら、ナイフを受け止めるなんてまず無理だから、恐れずやりなさい」
裕也が連敗しているのを見届けたところで明日香は言う。
「もちろん、真由美ちゃんと裕也君ほどの体格差があれば、一撃貰う覚悟で相手のナイフを奪うという事も出来なくはないけれど……そんな覚悟は普通は出来ない。だから、ナイフを振り回しても、親が向かって来るような場合は容赦なく切り裂いちゃいなさい。相手に、自分は本気だっていう現実を理解させてやるの。
でも、父親が逃げた場合は無理に追っちゃだめだからね? 追い詰められて逃げられないとなったら、相手は武器を持って対抗してくる。例えば、椅子とか、木の棒だったとしても……父親が武器を手にすれば、あなたの負けは濃厚。
追い詰められたネズミが猫を撃退することは出来ても、追い詰められた猫をネズミが上回ることは難しいから。だから、ネズミが猫を追い詰めちゃダメ。わかったね?」
「じゃあ、ナイフで追い払えたらどうすればいいんですか?」
「即座に家を出てホテルか信用できる友人の家に避難ね。で、今のところ風呂で襲われた時の対策をしてたわけだけれど……もしも寝込みを襲われた場合は……ま、スタンガンを使いましょ」
「ドアの前に画鋲でも仕掛けとけ。最初の一歩なんて誰も見ちゃいないから。ドアを開けて一歩踏み込んだ瞬間に、電気をつける間もなくチクリ、だ」
「三橋先輩も本宮先輩も……一体どういう発想しているんですか!? いや、発想自体はそこまでぶっ壊れてはいませんけれど、そういう言葉って普通スラスラ出てきませんよ?」
素華が尋ねると、裕也と明日香は肩をすくめて苦笑する。
真由美が頭を下げる、明日香と裕也は頷くと、神社の片隅で刃物を取り扱う訓練を始めた。真由美は最初こそ裕也のことを恐れて体が動かなかったが、裕也も彼女に危害を与えることはせず、本当に彼女の腕をつかむだけなので、だんだんと冷静に裕也の腕を見るようになる。
すると、真由美の勝率は徐々に上がっていき、めったなことで彼女の腕が捕まれることはなくなってしまう。
「見ての通り、ナイフを持った人間を無傷で制圧するっていうのは本当に難しいのよね。一応武道の経験者の男性である裕也君でも、ど素人である貴方を相手にこのざま……よく、軍隊や警察の演習とか、護身術で相手のナイフを奪う方法とかをやっているけれどね。そういう人たちですら、ナイフに対する一番の対処法は『逃げる』ことだって言うし。貴方の父親は素人でしょ? なら、ナイフを受け止めるなんてまず無理だから、恐れずやりなさい」
裕也が連敗しているのを見届けたところで明日香は言う。
「もちろん、真由美ちゃんと裕也君ほどの体格差があれば、一撃貰う覚悟で相手のナイフを奪うという事も出来なくはないけれど……そんな覚悟は普通は出来ない。だから、ナイフを振り回しても、親が向かって来るような場合は容赦なく切り裂いちゃいなさい。相手に、自分は本気だっていう現実を理解させてやるの。
でも、父親が逃げた場合は無理に追っちゃだめだからね? 追い詰められて逃げられないとなったら、相手は武器を持って対抗してくる。例えば、椅子とか、木の棒だったとしても……父親が武器を手にすれば、あなたの負けは濃厚。
追い詰められたネズミが猫を撃退することは出来ても、追い詰められた猫をネズミが上回ることは難しいから。だから、ネズミが猫を追い詰めちゃダメ。わかったね?」
「じゃあ、ナイフで追い払えたらどうすればいいんですか?」
「即座に家を出てホテルか信用できる友人の家に避難ね。で、今のところ風呂で襲われた時の対策をしてたわけだけれど……もしも寝込みを襲われた場合は……ま、スタンガンを使いましょ」
「ドアの前に画鋲でも仕掛けとけ。最初の一歩なんて誰も見ちゃいないから。ドアを開けて一歩踏み込んだ瞬間に、電気をつける間もなくチクリ、だ」
「三橋先輩も本宮先輩も……一体どういう発想しているんですか!? いや、発想自体はそこまでぶっ壊れてはいませんけれど、そういう言葉って普通スラスラ出てきませんよ?」
素華が尋ねると、裕也と明日香は肩をすくめて苦笑する。
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