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第4章:人の痛み

16話

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「ねぇ、素華さん。ちょっと父親が死なないように見張ってて」
「えっと、わかりました。具体的にどう死にそうなのかわからないけれど……二人は何を?」
 裕也が何を考えているか、素華は半分ほど察して頷いた。
「今後のことについて話し合うよ、これで終わりじゃなさそうだしね」
「分かりました。見張りなら任せてください」
 素華は裕也の言葉に胸を張って答える。
「じゃ、明日香」
 素華に見張りを任せると、裕也は明日香を呼ぶ。
「うん、用件はまぁ……多分、同じことを考えているんでしょうね」
 言いながら明日香は父親に声が聞こえないところまで移動する。
「アフターケアはどうする? このまま父親がおとなしく引き下がってくれるなら全部解決だけれどさ。あいつ、反省しているように見える?」
 裕也は古々の方に目を向ける。古々も自分に話しかけられたと理解しているのだろう、彼女は苦笑しながら答える。
『……まだ反省してる様子はないわ。ま、明日になってみないとわからないけれど、なんというか……うん、自分が悪いとは思っていないってやつね。少なくとも反省はしていない』
「と、いうことらしいが……」
 裕也は明日香のほうに苦笑する。
「はは、心が読める存在ってのは便利ね」
『だけれど、後悔さえしてくれれば救いはある。殺人罪がなければ、殺しの一つや二つ確実にやってるだろって奴くらい、見かけたことあるでしょ? 父親も、制裁を受けるとわかれば子供に手を出すこともなくなると思うの。今までは、警察にもバレやしない、好き勝手にやっても誰にも咎められることもない……そう思っていたからこそ、娘に対しての横暴だし。
 罰を受けることがなければ、どれだけでも残酷になれる人は存在する。あんまり人間扱いしたくないけれど。けれど、罰があれば人は罪を思いとどまることもできる。だから、どうしようもない人間性でも、反撃を受けるとわかったら……おとなしくなる可能性はある。ただ、父親も今のところはまだ、不意を受けなければまだ女の力を制することなんて出来ると考えている可能性はある。報復のために、父親がどれくらい真由美ちゃんを痛めつけるか、予想はできないわ』
 古々は言う。父親への評価がとことん低く、あたりは裕也や明日香と同じ認識だ。
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