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第4章:人の痛み

13話

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 やがて、明日香による父親の拘束が完了すると、立ち上がって母親の方を見降ろす。
「お風呂、使いますね」
 明日香のそれは有無を言わせない、脅すような口調だった。
「使いますって……何を……?」
 明日香の言葉に真由美は首を傾げた。
「この状態でで風呂桶にぶち込んで、ずっと額に水滴を垂らしながら、一日かけて反省させる。三橋君、手伝って」
「えげつないこと考えるなぁ……それ、何かの漫画で読んだ拷問だぞ」
「土下座なんてのは、簡単にできるから謝罪の意味は薄いけれど、一日中、暗闇の中で水滴をポタポタとたらされてたら反省もするでしょ? 拷問として使われるくらいだから結構辛いと思うけれど、傷をつけない拷問だからあと腐れもないしね」
「ま、自業自得だな……でもそれ本当に効果あるのか?」
「有名な拷問だしあるんじゃない?」
「あ、あの」
 裕也と明日香が家族そっちのけで話しているところで、真由美の母親であろう女性が怯えた目で話しかける。
「どうしました?」
「一体何をしようとしているんですか? 水滴とか拷問とか、何を言っているのかよくわかりません……」
「このまま風呂桶に放り込んで、ずっと眠れなくなる程度の刺激を与えるの。しかも一日中。なかなか素敵なアイデアでしょう? 暴力ばっかり振るってるやつには少しくらい反省させないとね」
「でも……この人の暴力はしつけのために……だから必要なことで」
 明日香が苛立たし気に説明すると、母親は何かに怯えたような表情で父親をかばう。
「本当に? 遅れた理由を何も聞かずにいきなり殴るような奴が本当に躾のために殴ったの? 本当に? っていうか、しつけのためなら、さっきの映像ネット上に流しちゃっていい? さぞや素敵なしつけだって、世界中から賞賛が来るかもしれないけれど。本当にしつけのため? いいの? 動画サイトに素晴らしいしつけをなさる家がありましたって、拡散しちゃうよ? そうだ、住所と名前、務めている仕事場も一緒に書いてあげましょうかね?」
 明日香は三度念を押すように『本当に?』と問うた。母親は本心から躾だと思っていないのだろう、明日香に対して何も言えなくなってしまった。
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