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第4章:人の痛み
14話
しおりを挟む「大体お前さ……その様子だとおまえ自身も殴られてるんだろ? 服の下、どうせ痣だらけなんだろ? 自分の妻まで躾するとは大した愛情だな。いいお父さんじゃあないか? ネット上に流出したら、きっと心温まるメッセージがたくさん届くだろうな」
裕也が嫌味を言うと、母親は無言で目を逸らした。
「図星かよ」
そんな母親の様子を見て、裕也が尋ねると、母親は頷いた
「じゃあなんで離婚しないんだよ。その甘えが今の状況だろ? 子供がスタンガンを持ち出すくらい追い詰められてるんだぞ?」
スタンガンを持ち出して渡しのは明日香だが、それを勢いでごまかしつつ裕也は母親を責める。どちらにしろ、それを使うくらいに追い詰められていたのだから同じことだ。
「そうなる前に離婚しろよ? 子供を何だと思っているんだよお前!? そのうち子供に刺されるぞ! 子供を犯罪者にしたいなら、そう言え! 私は子供を犯罪者にしたいから父親を放置していますって言え!」
「だって……夫は外面がいいから……」
「そんなもん、証拠をつかむのに盗聴機でも盗撮機でも家に仕掛けたり、医者の診断書でもなんでも手段はあるだろーが!? それで証拠なんぞいくらでも取れる! お前はそうやって言い訳して、自分の可愛さのために子供の人生を犠牲にしてきたんだろ?
それともなんだ? この暴力野郎と離婚できない理由でもあったのか? 父親の実家に多額の借金でもしてるのか? 俺も、勝手な思い込みだけで批判するのはいけないと思ってるから、やむを得ない理由があるなら聞くぞ? 言ってみろ!」
「お金……夫が稼いでいるから……私は働いていなくて……」
「離婚しても養育費は取れるだろ!? 取れない理由があるのか? 夫の親も巻き込んで裁判の一つや二つでも起こしゃいいじゃねえか。まさか養育費も知らないだなんて言わせねえぞ!?」
「養育費は出さないって言われて……」
「知るか! そんな宣言は法律の前には無意味だ! 弁護士をつけて離婚しろよ! 会社にも差し押さえの申請をしろ! こんな状況ならどうあがいてでも離婚するべきだったろ? 真由美ちゃん、まだ高校一年生だぞ? それなのに毎日こんなのに殴られて、家に帰りたくないとか思ってるだなんておかしいだろ!? あのさぁ、母親が子供を守らないんだったら誰が子供を守るんだよ……腕力でかなわなくったって弁護士入れるなりなんなり、やり方はいくらでもあるだろ……闘えよ! 大人なら」
裕也は、父親に対してはもはや何を言っても無駄、金だったり苦痛だったりで制裁して、二度と逆らえないようにすると考えているようで、父親への説教はせず、代わりに母親へはボロクソに言っている。今まで、素華は裕也の優しいところしか見ていない。だから、ここまで怒りをあらわにする彼の姿に恐ろしさを覚えると同時に、頼もしさも感じた。
それとは別に、どこからそんなに離婚に関する知識が溢れてくるのだろうという疑問も感じていたが、それは口にしないことにする。
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