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第2章:いじめを終わらせよう

21話

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『あ、ごめん……つい』
 最初からずっと後ろで聞いていた古々だが、彼女は退屈だったのかつい思わず発言してしまったようである。しかし、古々の声は現状では裕也と明日香にしか聞こえないため、はた目には裕也の行動は幻聴でも聞いているようにしか見えないのだ。
「え、えっと……うん、いいのよ」
 代わりに答えたのは明日香である。明日香は古々に言われるがまま、女性が土俵に上がることについての是非を語る。
『そもそもね、相撲の女人禁制っていうのは……』
「そもそも、相撲の女人禁制ってのは、実は明治初期にできたしきたりで、それまでは女性同士の相撲もあったそうよ。鎖国も終わり、外国からの来賓に見せる以上、女性が上半身裸で組み合うっていうのはいろいろ問題があったから……女性が禁止されたとかそういう事情もあったんだと思うの。
 あとね、相撲は武道だけれど、武道というのは矛を止めると書いて武。何かを守るために用いるのが武なの。剣道も空手も柔道も女性を禁じることはない。で、あれば相撲にだって女性も男性もないわ。だから、武道を真面目に学ぶのであれば、神は見守ってくださる。相撲を女人禁制だとか勘違いして選択肢を狭めるのはだめよ。素華さんがやりたいなら、やらせてあげなさい」
 明日香は古々の言葉遣いを自分なりに直してそう解説する。
「ただ、その……神社は血液や病気を嫌うわ。だから、生理痛の時とか、病気や怪我の時なんかは女性は土俵に上がらない方がいいわね。もちろん、大きな怪我をした男性もね」
「それ、運動系の部活なら当たり前の事じゃね? 怪我したら休むのは当然だろ? まぁ、プロスポーツだとそうもいかない感じだけれどさ……」
 裕也は明日香が付け加える言葉に苦笑する。
「当たり前でも、神聖な場所だからっていっておけば、堂々と休めるでしょ? 私は生理痛、そこまで激しくないからなんてことないけれど、友達は月に二日ほど必ず生理痛で学校を休む子もいたから……まぁ、症状によりけりね。なんにせよ、無理はいけないわ」
「あ、私生理痛はかなり重いので、そう言われると助かります……来ないように薬は飲んでいますけれど」
 素華は苦笑しながら言う。
「とりあえず……分かった。そういうことなら、女性が土俵に入ってもいいようだし、入部してくれて構わないよ。ただ、女性となると俺もどうやってトレーニングすればいいかわかんねえな……女を相手にガッツリ組み合うわけにはいかないだろ? 基礎トレーニングの指導くらいならできるけれど」
「なら、私が指導するよ。私、柔道二段、空手は三段だし、相撲なら柔道の技も空手の技も応用出来るから。そうだ、せっかくだし私も相撲部に入っちゃおうかな。その方が部活も存続するし都合がいいでしょ?」
「え……ってことは、明日香も相撲部はいるの?」
 明日香の提案は思ってもみないことで、裕也は驚き目を見開く。
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