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第2章:いじめを終わらせよう

5話

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「シマ荒らしなんてしないから安心して。百合根の商売を邪魔する気はないわ」
 そんな百合根のおふざけに、明日香も裕也も笑ってごまかすしかないのであった。
「実は素華さんの周りには盗聴器もつけたし、証拠画像はたくさん撮ってあるし、後はもう証拠を突き付けるだけの楽な仕事よ。あいつら結構えげつないことしていて、体操服や制服を水で濡らしたりとか、髪の毛を切ったりとか……よくまぁ、我慢するものね、素華さんは。明日香と裕也は、助けたくなっちゃったの?」
「うん、そんなところ。助けたくなっちゃったの。それにしても仕事が早いことで……どうやって情報を仕入れたのやら」
「どうやってって、有力な情報があればお金をあげるって交渉したら、何人かに1人はいじめの情報くらいポロっと漏らしてくれるものよ。隠れてるいじめならともかくだけれど、あれほどわかりやすくいじめてたら、すぐにわかっちゃう」
「コミュ力すごいな……」
 百合根の仕事の速さに、裕也は乾いた笑いが漏れる。
「ヤクザってのは、犯罪も含めた『何でも屋』よ。流行には敏感だし、仕事は迅速に行うのが鉄則なの。思い立ったが吉日、そう父さんに教わったの」
「それにしたって、盗聴器とはよくやるわ」
「案外ばれないものよ。いじめられっ子は精神が参っているから、細かいことまで気が回らない子もいるし。逆に神経質になっちゃうような子にはバレちゃうかもだけれど」
 そう言ってのける百合根はすでにベテランのヤクザかなにかのような風格が感じられる。
「それで、貴方はあの子たちをどうしたいわけ? 救いたいっていうんなら、私に任せておけば何の問題もないけれど、手伝ってくれなら大歓迎よ?」
「じゃあ、手伝う。でね、百合根。私たちとしても少し欲しいものがあるのよ……」
 百合根の言葉に明日香が即答する。一方、明日香の言い分には百合根は首をかしげていた。
「欲しいもの? お金の分け前なら、働きによっては工面するけれど?」
「えっとね、私たち、お金じゃなくって参拝客が欲しいのよ。神社の参拝客。助けた子に、うちの神社にお参りに来るようにお願いしたいの」
「ふぅん? 神社が儲かっていないのはなんとなくわかるけれど、参拝客が欲しい? 結構変わったことをお願いするのね。いいわ、明日香ちゃんちの神社に祭られてるのは武神でしょう? いじめに対抗するにはやっぱり力だし、いいんじゃない?」
 明日香の欲しいものについて、百合根はピンと来ていないようであった。当たり前だ、信仰心を食べる神のために信仰心を集めたいなどと言ったところで、だれが信じるであろうか。
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