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第1章:古々が来た日の夜

6話

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『で、裕也。私にマスターベーションを見せてくれる話だけれど、貴方はいつもどんなAVで抜いてるの?』
「いや、あの……古々。そういうデリケートな問題に遠慮とかないの?」
 遠慮なしにずけずけと聞いてくる古々に裕也は困惑する。
『だって気になるじゃない? 自分が守る男の子の性癖とか……それに、私こう見えて淫魔の類だから、専門の夢魔ほどじゃないけれど、他人の夢に干渉するくらいならできるのよ?』
「いや、初耳なんだが。なんだよ淫魔って!? お前神使じゃないのか? その蛇の尻尾が生えた格好といい、お前実は悪魔じゃねーのか!?」
『あら、神使と妖怪と悪魔に明確な基準は存在しないの。神使だって千差万別。人間だって、一口にサラリーマンと言ってもどんな資格や特技を持ってるかは全然違うでしょ? 昼は事務員だけれど夜は風俗嬢かもしれないし、世間を騒がす怪盗かもしれないし、某国のスパイかもしれないように』
「それはそうだけれど……夢魔ってことは、夢を見せることもできるのか?」
『うん、特にエッチな夢なら得意分野なんだから! えっへん!』
「それは自慢することなのか……」
 古々の微妙に癖のある口調を聞いて裕也は苦笑する。
「親しい相手なら……好きなAVを教えてもいいけれどさ。俺は古々のことを知りたいというか、古々が俺のことをどれだけ知っているか、教えてほしいんだが。俺は古々のこと、何も知らないんだ」
『私が? うーん……知ってるったって、どこから話せばいいのやら、あなたのこと、小学三年生から見かけてはいたけれど……』
「じゃあ、その時から頼むよ」
『わかった……貴方は、小学三年生の時、明日香ちゃんに連れられてこの神社に来た……青アザがついていたわ。大方、明日香にでもやられたんでしょ?』
「正解。明日香はそのころから暴力女だったんだよ……」
『そして、その日から毎日のように夕食を食べにウチに来るようになった。うん、初めてあなたを見たときから家庭に何か問題があることは分かっていた……寂しそうな感情だったからね。それに、痩せてたし、服もボロボロだったり、パツパツだった』
「うん、そんな感じ。続けて」
『そして、小学四年生くらいに、貴方の感情には変化が現れた。寂しさだけでなく憎しみや悲しみが混ざり始め……時折、傷がついていた。そして小学五年生の時のある日……うん、確か夏休みの頃だったかな。貴方は、ぱたりと神社に来なくなった。
 ……気になってはいたのよね。信二(明日香の父親)さんや友子さん(明日香の母親)も、電話口ですごく深刻な顔をしていた。「なにかあったの?」って聞いたら、「裕也君が来れなくなるかもしれない」って言われて。でも、それ以上は言わなかったから、私も聞かなかった……』
 古々の話を聞きながら裕也は眉間にしわを寄せる。
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