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13話
しおりを挟むアハハハ……って全く笑えないんですけどッ!!
『お主、凄いのう。相当女神様に好かれているようじゃ』
悠理を褒める銀狼。
……女神様、ごめんなさい。全然嬉しくないです。
「流石私のユウリだね」
そこの人、どさくさに紛れて『俺のモノ』発言しないでください。私は私のモノです。誰のモノではありません。
『凄い~、凄い~』
白狼が尻尾を振りながら、悠理の身体に自分の顔を押し付けてくる。
嗚呼、なんて可愛いんだろう。モフモフは、いつでも大歓迎です!! pleaseモフモフ!!
「……この駄犬、ユウリを独占しやがって……」
ん? 隣の美少年の容姿からは想像もつかないような言葉が聞こえたような……。
『もっと触って~~』
白狼は、ルイ王子から放たれる怨念のこもった視線を物ともせず、悠理に甘えてくる。
「すみません。あなたのお子さんがユウリに発情しているようなので、殴ってもいいですか?」
物騒なことを言い出すルイ王子に、狼狽える銀狼。
『な、殴る? 我が息子をか?』
「ええ、こういうのは早めに躾おいた方がいいんです。じゃないと……調子に乗ってしまうでしょう?」
『そ、そうなのか……い、いいだろう』
黒い笑みを浮かべるルイ王子に、強く出れな銀狼。多分本能的にこいつに逆らってはいけないと思っているのだろう。
「ありがとうございます」
ルイ王子はゆっくりと白狼に近付いていく。
「ふふ、可愛い……。ん? ルイ、どうしたの?」
ゆっくりと近寄ってくるルイ王子に気が付いた悠理が、首を傾げながら問いかける。
「犬の躾をしないと思って、ね?」
「犬の、躾?」
「そうだよ。こんな風に」
ルイ王子が何かを呟くと同時に、白狼がおすわりをする。
『わわわッ!? 身体が勝手に動く!』
「わあ!! ルイ、凄いね!」
おすわりをする白狼に、悠理は賞賛の拍手を送る。
「……そう?」
「うん!」
優しく笑みを浮かべるルイ王子の心の内を知るはずもない悠理は、無邪気に喜ぶ。
『なんと恐ろしい少年じゃ。我ら神獣をああも簡単に操るなんて……』
銀狼は身体をブルブルと震わせながら、独り言のように呟いた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『ユウリとやら、我が森に加護結界を張ってくれたこと、感謝する』
『ありがとうございます』
……ルイ王子の躾? のおかげなのか、白狼ルージャの態度が明らかに良くなった。
「いえいえ、成功して本当によかったです」
『ユウリ、本当に行っちゃうの?』
「ゴホン」
悠理を引き留めようとするルージャに、軽く咳払いをするルイ王子。
『い、行ってしまわれるのですか?』
白狼は慌てて言い直す。
咳払い一つで……なんと凄い影響力だ。
「ごめんなさい。そろそろ戻らないとお城の人が心配してしまうの」
「そうですよ、ルージャ。ユウリは私のモノなんです。ルージャのモノではありません。分かりましたか?」
はて? この人は、ルージャに何を言いきかせているのだろうか? 怖いので愚痴は心の中だけにしておきます。小心者ですみません。
『でも……ユウリと離れたくない、です』
なんて可愛いことを言う白狼なのだろうか? 思わず抱きしめてしまいましたよ。
『ロウシャ、お前の息子ルージャをその少年の契約獣にしなさい』
男性の声が銀狼ロウシャの脳内に響き渡る。
『なッ!? 我が息子をですか?』
男性の言葉に焦り出す銀狼ロウシャ。
『そうだ。その少年は我の加護持ちである』
『し、しかし……我々は神獣ですぞ? 神獣が人間の契約獣など……異例中の異例です』
『気にするな。我が許す』
男の言葉に、銀狼ロウシャは渋々頷く。
『少年よ。今私に神託が下った。ルージャをそなたの契約獣にせよ、と』
「お断りさせていただきます」
すかさず銀狼ロウシャの提案を断るルイ王子。
『なっ!? まだ若いといえ、ルージャは神獣であるぞ?』
「いえ、こんな駄犬……失礼、あなたの大切な息子さんを私の契約獣にするなど、とても恐れ多い」
明らかに嫌がるルイ王子。
『少年よ、諦めろ』
「必要ありません。はっきり言って、邪魔です」
ルイ王子の口からポロっと本音が漏れる。
『これは神の決定だ。そなたの我儘でどうにかなる話ではない』
『そうだそうだ!』と神の声が響く。
ロウシャだって辛い。どうして神はこんなことを望むのか、と思う。
すると、神がドヤ声で言う。
『面白いからだ』と。
なんて、傍迷惑な神なのだろう。
そんなロウシャの気持ちを知る由もなルージャは大喜びだ。
『やった……じゃなかった。ルイ様、末長くよろしくお願いします』
白狼がルイ王子に深々とお辞儀をする。
「どうしてこんなことに……」
ルイ王子の悔しそうな声が周囲に響き渡った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうやら、白狼ルージャはルイ王子の契約獣となるようです(ルイ本人は嫌がっていますが)。
悠理のペットは、できるかもしれないし、できないかもしれません。
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