虐げられた仮面の姫は破滅王の秘密を知る

涼月

文字の大きさ
24 / 36

一緒にいたい(エクレールside)

しおりを挟む
 ぎりっと歯を食いしばった。

 ローグ王、舐めた真似をしてくれたな!
 俺の大切なティアナを殺害しようと企むとは。それがどんな代償を払うことになるのか気づかぬはずもないのに。

 ビリビリと体から放電し始めた。
 まずい! 今暴発することは避けなければ!
 焦りが募るが怒りが抑えられないんだ。

 そんな俺に気づいたティアナ。必死の眼差しで抱きしめてくれた。
 俺の発する電気が伝わって痛いはずなのに、決して俺の体を離そうとはしない。
 ありったけの癒しの魔力を注いでくれたおかげで、なんとか踏みとどまることができた。

「エクレール様。どうか落ち着いてください」
「すまない。だが、許せない。そなたを殺そうとするなど、許せるわけがない!」
「ありがとうございます。私、幸せ者ですね。エクレール様にそんな風に言っていただけて」

 ああ、俺の妻はなんて健気な女性なんだ。
 身内からこんな酷いことをされてショックを受けている時に、俺の暴発を抑えようと必死になってくれるなんて。
 
 ふうっと大きく息を吐いて、体から力を抜いた。

「ティアナ、ありがとう」
「ああ、良かったです」

 安堵と共にふらりと揺らいだティアナを慌てて抱き上げた。

 やっぱり。心痛が酷いのだろう。一人にさせておくのは心配だな。

「ティアナ、そなたの身が心配だ。これからは一緒の部屋で過ごそう」

 思わず勢いで言ってしまった。
 言ってしまってから事の重大さに気づいたけれど、寧ろこれで良かったと思った。

 何より、不安げに揺れる翠の瞳が安堵に変ったのを見て確信できたんだ。

 一緒にいたい―――それが本心だ。


 その時になって、ようやく気付いた。

 仮面……忘れていた。

 二人で執務室で過ごしていたところへ、血相を変えたイオスがやって来た。
 エミリアを案じたティアナがそのまま飛び出し、後を追って俺も飛び出した。
 だから、二人とも仮面をつけるのをすっかり忘れていたんだ。

 でも、怖いとは思わなかった。人々の視線が全然気にならなかった。
 単に必死だったから、そこまで気が回らなかったと言えばそれまでだけれど、一番の理由は分っている。

 ティアナと一緒だからだ。
 一緒なら、怖くない。

 王宮の連中はさぞ驚いているだろうな。

 それにしても、なぜ和平のために嫁にやったティアナ姫を、ローグ王はわざわざ殺そうとしているのだろうか?
 宣戦布告のつもりなのだろうか?
 俺が彼女を大切にしていると知って、ダメージを負わせようとしたのか?
 
 謎だがまあいい。その所業を後悔させてやる!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...