上 下
2 / 3

準備

しおりを挟む
 ちょっと一緒に出席するだけと言っても、色々話を合わせておく必要があるよな。
 そう思った瞬間、優花が打ち合わせをしたいから明日の夜会おうと言ってきた。
 もちろんOKしたよ。それからの二週間が地獄になるとも知らずに。

 互いの大学の中間くらいの位置で待ち合わせ。なるべく学生が少なそうな店を探していたら、ちょっとイイ感じの喫茶店を見つけた。静かだし話しやすそうだなと思ったら、優花も同じことを考えている様子。
 以心伝心で扉の中へ。

 二人っきりで茶店と言うのは初めてのことで、緊張しない仲とは言え微妙な空気が流れだす。それを断ち切るように、わざと事務的に当日のことや敵の概要を尋ねてみたんだが……失敗した。まだまだ立ち直っていない優花は、話し始めると興奮して泣き出してしまった。

 まるで俺が泣かしているみたいじゃないか。

 焦って横の席へ移動。背をさすってやるとウルウルした瞳でこちらを見上げてくる。

「翔太ぁ~、ありがとうね。本当にありがとう」

 か、かわいい!
 不意打ちに心臓がドキリとする。

 涙を拭いた優花。

「翔太のお陰で元気でた。ありがとう」

 今度はとびっきりの笑顔になった。

 う……かわいい。
 またもや心臓をやられた俺。

「泣いてすっきりしたらお腹すいちゃった。なんか頼もう。そうだ! お酒も飲もう」

 二人でピザとスパゲティとサングリアを頼む。

 自分から飲もうと言い出したくせに、お酒に弱い優花。目元がほんのり赤く潤んできた。

「ねえ、翔太。カレカノするんだったらさぁ、それっぽくしないと直ぐバレるよね。きっと」
「まあな」
「じゃあさ。今日からパーティーの日まで、カレカノしよう」
「……ごふっ」
「あ~ん、もう、大丈夫? ほら、拭いてあげる」

 俺の口元を笑いながら拭いてくれる。一瞬目が合って、三度目のジャブを決められた俺は頽れる寸前。
 でも、優花は違った。俺なら緊張しないと豪語した通り、なんのためらいも緊張もなく振舞っている。

 うん、そうだよな。
 分っていたよ。わかってはいたけれど……悲しい。
 
 はあ~

 心の中でこっそりため息をついた。

「あ、そうだ。明日待ち合わせして洋服買おう」
「へ?」
「だって、当日カッコいい翔太がいいんだもん」

 まあ、そうだよな。折角彼氏ができても、ダサ男じゃリベンジにならないもんな。
 今更顔はどうにもならないけど、せめて衣装くらいはな。

「わかった。んじゃ明日待ち合わせして買いに行こう」

 
 次の日は、二人でショッピングだ。

 あーでもない、こーでもないと何回も着替えさせられた。俺は着せ替え人形じゃねえっつうの。
 ようやくお気に入りの組み合わせを見つけたようで、「これにしよう」と上目遣い。

 はいはい。俺に買えと。圧かけんなよな。

 なぜか自腹で洋服を買わされた。まあ、これから何回も着られるんだからいいか。
 ちょっと悔しくなって言い返す。

「お前も買わないの? 新しい服の方がいいんじゃねえの」
「確かに。そうだよね。生まれ変わったあたしを見せなきゃ」

 女の子の買い物に付き合うって、生半可な覚悟じゃ足らなかったと大いに後悔したけれど、ファッションショーする彼女を見るのは眼福だったから、ま、いいや。

「最近の服は、そいつの好みだったのか?」

 ぶっきら棒にそう問えば、「……そうだね」と一言。
 
「ねえ、翔太。あんたが決めて」
「え?」
「あんたがいいって思った服にする」
「でも、俺じゃセンスが……」
「あたしが選んだ中から決めてくれるだけでいいから。ね、お願い」

 拝まれちゃ断れないぜ。

 俺は昨日今日の彼女の服装は好きじゃ無かった。背伸びした大人のような恰好で。
 俺が好きな優花は、もっと健康的な可愛らしさに溢れているんだよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

飲みに誘った後輩は、今僕のベッドの上にいる

ヘロディア
恋愛
会社の後輩の女子と飲みに行った主人公。しかし、彼女は泥酔してしまう。 頼まれて仕方なく家に連れていったのだが、後輩はベッドの上に…

なんでこんなにあんたのモノは大きいのよ!

ヘロディア
恋愛
突然知り合いの男から実験と称し、絶頂に達せられた主人公。 翌日、その男の彼女を名乗る人物に問い詰められる。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...