51 / 127
Episode2 プロデュース第一弾
寄り添うための一歩 (一華side)⑤
しおりを挟む
「あ、閉館時間が近づいているのでさっさと入りましょう」
晴れ晴れとした顔になった龍輝が誘ったのは、会社が運営しているミニ水族館。子ども達に海のことを知ってもらうために作られた学習型施設で、入館料は格安だ。夏休みにはたくさんの親子連れが訪れていて、今もそこそこ混雑している。
そんな中へ、背の高いカップルが乱入した格好だ。
でも、隣のイケメン……小学生に負けないくらいキラキラした目をしているけれど。
思わず母親のような気分で見つめてしまった。
「一華さん、こっちこっち」
そう言って指差したのは、やっぱりクラゲのコーナー。
でも、自分の事を同じくらい愛してくれそうと思ったら、龍輝のクラゲ愛が深ければ深いほどいいなぁと思ってしまうゲンキンな一華だった。
なんとなく、龍輝さんの叙述トリックにハマったような気がしなくもないけれど……
でも、そんな計算ができたら、きっと龍輝さんは今の龍輝さんじゃないわね。
子どもの施設とタカをくくっていた一華は、幻想的な水槽を見て驚いた。
展示エリアはライトサイドとダークサイドに分かれていて、クラゲはカーテンで仕切られた暗い空間にいた。
中央に大きくて丸いクラゲ水槽。
数えきれないほどたくさんのクラゲがふわりふわりと舞っている。
まるで無垢な天使の羽のようだと思った。
時折七色に移り変わる光が、クラゲの色をも変化させていく。
すると今度は艶やかな蝶の雰囲気を纏い始める。
実は内に毒を秘めた危険な存在なのだと言うことを思い出させた。
そんなクラゲたちを慈愛に満ちた眼差しで見つめている龍輝。
龍輝さんって、本当にクラゲが好きなのね。
「クラゲのこと、教えて下さい」
そう囁けば、彼の口元に笑い皺が生まれた。
「そうですね……じゃあ、今日はクイズ形式で。クラゲの脳は何処にあるでしょうか?」
「え?」
目を丸くした一華、目の前の水槽に視線を戻す。目を凝らして、一生懸命眺めてみるもよくわからない。
「わからないです。体の真中とか?」
「実は引っ掛け問題です」
「引っ掛け問題?」
「そう。クラゲに脳にあたる器官は無いんです」
「ええー。じゃあどうやって生きているんですか? まさか何にも考えていないのかな?」
一華の言葉に、ますます嬉しそうになる龍輝。
「そうですね。人間が思うような『考える』行為はしていないのかもしれません。その代わりに全身に『散在神経』と言う神経が張り巡らされていて、反射神経で生きているんです。触れたら即、行動。即毒注入、即捕食……と言う感じですね」
「そうなんですか……知らなかった」
晴れ晴れとした顔になった龍輝が誘ったのは、会社が運営しているミニ水族館。子ども達に海のことを知ってもらうために作られた学習型施設で、入館料は格安だ。夏休みにはたくさんの親子連れが訪れていて、今もそこそこ混雑している。
そんな中へ、背の高いカップルが乱入した格好だ。
でも、隣のイケメン……小学生に負けないくらいキラキラした目をしているけれど。
思わず母親のような気分で見つめてしまった。
「一華さん、こっちこっち」
そう言って指差したのは、やっぱりクラゲのコーナー。
でも、自分の事を同じくらい愛してくれそうと思ったら、龍輝のクラゲ愛が深ければ深いほどいいなぁと思ってしまうゲンキンな一華だった。
なんとなく、龍輝さんの叙述トリックにハマったような気がしなくもないけれど……
でも、そんな計算ができたら、きっと龍輝さんは今の龍輝さんじゃないわね。
子どもの施設とタカをくくっていた一華は、幻想的な水槽を見て驚いた。
展示エリアはライトサイドとダークサイドに分かれていて、クラゲはカーテンで仕切られた暗い空間にいた。
中央に大きくて丸いクラゲ水槽。
数えきれないほどたくさんのクラゲがふわりふわりと舞っている。
まるで無垢な天使の羽のようだと思った。
時折七色に移り変わる光が、クラゲの色をも変化させていく。
すると今度は艶やかな蝶の雰囲気を纏い始める。
実は内に毒を秘めた危険な存在なのだと言うことを思い出させた。
そんなクラゲたちを慈愛に満ちた眼差しで見つめている龍輝。
龍輝さんって、本当にクラゲが好きなのね。
「クラゲのこと、教えて下さい」
そう囁けば、彼の口元に笑い皺が生まれた。
「そうですね……じゃあ、今日はクイズ形式で。クラゲの脳は何処にあるでしょうか?」
「え?」
目を丸くした一華、目の前の水槽に視線を戻す。目を凝らして、一生懸命眺めてみるもよくわからない。
「わからないです。体の真中とか?」
「実は引っ掛け問題です」
「引っ掛け問題?」
「そう。クラゲに脳にあたる器官は無いんです」
「ええー。じゃあどうやって生きているんですか? まさか何にも考えていないのかな?」
一華の言葉に、ますます嬉しそうになる龍輝。
「そうですね。人間が思うような『考える』行為はしていないのかもしれません。その代わりに全身に『散在神経』と言う神経が張り巡らされていて、反射神経で生きているんです。触れたら即、行動。即毒注入、即捕食……と言う感じですね」
「そうなんですか……知らなかった」
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる