49 / 127
Episode2 プロデュース第一弾
寄り添うための一歩 (一華side)③
しおりを挟む
「実は俺、今まで誰かとお付き合いしたこと無いんです。友人は男女問わずいるんですけれど、特別な関係になったことなくて。だから、カッコイイ口説き文句も、男女の機微もわからない。それに、嘘つけないし」
「うふふ。嘘つけないんですか?」
「つけないですね。だから言っちゃいます。三十二歳にもなって誰とも付き合ったこと無いって言ったら引かれるから、絶対言うなって五十嵐さんに厳命されていたんですけど」
「五十嵐さん?」
「ああ、俺の先輩です。仕事もプライベートもお世話になっています。今度紹介したいです」
ああ、だから。と一華は納得する。
あきらかにデート慣れしていない彼の後ろに見え隠れするブレインの陰は、とっくに気づいていた。それが、この五十嵐さんなのか。
「そうだったんですか。でも、良い先輩に恵まれて良かったですね」
「ええ。マッチングアプリのことも、五十嵐さんが教えてくれました。その時色々教えてくれて。『三十二年彼女無し』って肩書は、相手の女性に不安やプレッシャーを与えるからわざわざ言わない方がいいって。でも俺、隠し事したくないんです。事実だし」
屈託のない笑顔でにっこり。
なんて誠実なの……いや、馬鹿正直と言うべきか。
ブレイン五十嵐が危惧していたのは、彼のこんなところなのだろうなと思う。
私だから良かったものの……
そしてついつい冷静に分析してしまう。
素敵な恋を男性に主導してもらいたい夢見る女子だったら、こんな明け透けな情報はいらないわね。
刺激的な恋を求めている女性だったら、邪鬼の無さは興ざめを生むし。
安定堅実な恋に安らぎを感じる女性なら……ぎりぎりいけるけど、とってもゆっくりな恋になりそう。
なにより婚活、恋愛アプリにおいて、『三十二年彼女無し』の情報は微妙だ。
だって……つい色々と勘繰ってしまうものでしょう。
実は性格に難ありなのかなとか、女性の気持ちに鈍感なのかなとか、性的不能なのかなとか……
良く知らない相手を推し量るためには、情報と常識を組み合わせて推理するしかないのだから。
そう思ったところで、一華は重大なことに気づいた。
なぜ、ブレイン五十嵐が『三十二年彼女無し』の事実をばらすなと釘を刺していたのか。
その真の意味を。
つまり、彼は……童て……
無邪気に笑っている龍輝を見て思う。
あ~あ。この恋は前途多難ね。
と思うと同時に、ふつふつとやる気が湧いてきた。
うふふ。最高の一夜をプロデュースできるなんて。
ラッキー!
「うふふ。嘘つけないんですか?」
「つけないですね。だから言っちゃいます。三十二歳にもなって誰とも付き合ったこと無いって言ったら引かれるから、絶対言うなって五十嵐さんに厳命されていたんですけど」
「五十嵐さん?」
「ああ、俺の先輩です。仕事もプライベートもお世話になっています。今度紹介したいです」
ああ、だから。と一華は納得する。
あきらかにデート慣れしていない彼の後ろに見え隠れするブレインの陰は、とっくに気づいていた。それが、この五十嵐さんなのか。
「そうだったんですか。でも、良い先輩に恵まれて良かったですね」
「ええ。マッチングアプリのことも、五十嵐さんが教えてくれました。その時色々教えてくれて。『三十二年彼女無し』って肩書は、相手の女性に不安やプレッシャーを与えるからわざわざ言わない方がいいって。でも俺、隠し事したくないんです。事実だし」
屈託のない笑顔でにっこり。
なんて誠実なの……いや、馬鹿正直と言うべきか。
ブレイン五十嵐が危惧していたのは、彼のこんなところなのだろうなと思う。
私だから良かったものの……
そしてついつい冷静に分析してしまう。
素敵な恋を男性に主導してもらいたい夢見る女子だったら、こんな明け透けな情報はいらないわね。
刺激的な恋を求めている女性だったら、邪鬼の無さは興ざめを生むし。
安定堅実な恋に安らぎを感じる女性なら……ぎりぎりいけるけど、とってもゆっくりな恋になりそう。
なにより婚活、恋愛アプリにおいて、『三十二年彼女無し』の情報は微妙だ。
だって……つい色々と勘繰ってしまうものでしょう。
実は性格に難ありなのかなとか、女性の気持ちに鈍感なのかなとか、性的不能なのかなとか……
良く知らない相手を推し量るためには、情報と常識を組み合わせて推理するしかないのだから。
そう思ったところで、一華は重大なことに気づいた。
なぜ、ブレイン五十嵐が『三十二年彼女無し』の事実をばらすなと釘を刺していたのか。
その真の意味を。
つまり、彼は……童て……
無邪気に笑っている龍輝を見て思う。
あ~あ。この恋は前途多難ね。
と思うと同時に、ふつふつとやる気が湧いてきた。
うふふ。最高の一夜をプロデュースできるなんて。
ラッキー!
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる