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第十章 使命遂行
第88話 扉の先へ
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溢れ出した井戸の水にもみくちゃにされて、一度は意識を手放した飛王だったが、胸に抱えた 星砕剣だけは、無意識のうちにも抱え続けていた。
体を包み込むふわふわとした感覚に、ふと目を開く。
深い藍色が迫り、煌めく無数の光の中を漂っていた。
ここはどこだろう?
まるで星空の海に浮かんでいるようだ。
俺は今、 宇宙にいるのか?
飛王はゆっくりと辺りを見回した。
ここが井戸の中なのか?
飛翔もここを通ったのだろうか?
今もここにいるのだろうか?
飛翔の名を呼んでみる。
飛翔、俺は泉の中だ!
俺は泉でお前を待っているぞ!
だが返事は無かった。
まだ来ていないのかな。
時の輪の先とは、一体どのくらい先にいるのだろう?
待つしか無いんだな……
飛王はそう呟くと、抗い難い眠気に襲われて再び目を閉じた。
長い長い眠りについていたようだった。
目の開け方すら覚束ない感覚に焦りながら、飛王は声のする方へ視線を動かす。
ヒオウ……
飛王!
声が近づくのと同時に、その人物の輪郭もはっきりしてくる。
ああ! 禊祭の服のままだな。
変わらないな。
「飛王! 待たせたな」
人影は滑り込むように、飛王の元へやって来た。
待ちわびた人。
俺の片割れ。
飛王は飛翔を見て微笑んだ。
一瞬でも早くと、手を差し伸べる飛翔の顔にも笑顔が溢れている。
二人はしっかりと手を繋いだ。
「飛王、一人にしてすまなかった」
「飛翔、一人にしてすまなかった」
互いに同じ言葉を言い合って、思わず吹き出す。
「飛翔、お帰り」
「飛王、ただいま」
離れていた空白を埋めるかのように、じっと見つめ合う。
そしてお互いに少しだけ大人びた姿を確認して、誇らしい気持ちになる。
変わらない事なんて……無いんだな。
飛王はそう思うと、飛翔の肩を抱いた。
二人でがっちりと抱き合って、互いの存在を肌で確認した。
「飛翔、お前どこに行っていたんだ?」
「千年後!」
飛王の目がまん丸くなる。
「千年後! 誰も知り合いのいないところで色々苦労したんだろうな。すまなかった。ありがとう」
「飛王こそ、一人で国を守り切ったなんて凄いよ。お前の苦しい日々は全部流花から聞いたよ。踏み留まってくれてありがとう」
「俺は飛翔みたいに一人じゃ無かったよ。みんなが居てくれたから」
その言葉に、飛王の心が如何にみんなに支えられていたかを確信する。
飛翔は胸をなでおろすと同時に嬉しい気持ちになった。
「俺も一人じゃ無かったよ。でも、その話をする前に……飛王、結婚おめでとう! 二人が結婚して、短くても幸せな日々を過ごせたこと、凄く嬉しかったんだ。流花の手紙から二人の熱々な様子が伝わってきたぜ」
飛王の顔が赤くなった。
「もしかして、流花に会えたのか?」
「んな訳ないだろ。千年後だぜ」
飛翔は思わず苦笑する。
「だよな」
飛翔は飛王を思いっきりからかってから、また真剣な表情に戻った。
「流花の手紙はお前が預けてくれた俺のからくり箱の中にあった。千年もの間、アニスの子孫が守り続けてくれていたんだ。お陰で俺は辿り着くことができた」
「そうか……良かった。流花とアニスは無事イリス島に辿り着けたんだな」
飛王の顔が父親の顔になった。
ほっと安堵のため息をつくと、愛おしそうに二人の名を口にする。
その様子を見て、飛翔も温かい気持ちになった。
だが、次の瞬間、飛王の顔が悲しみに歪んだ。
「飛翔、すまない。リフィアを守れなかった。それどころか、リフィアは俺のために命を落とした。本当に申し訳ない」
「飛王、それはお前のせいじゃない。それに、リフィアがお前を助けてくれたお陰で、俺はこうやってお前にまた会えたし、『ティアル・ナ・エストレア』の役目も果たすことができるんだからな。二人で無事使命を果たせたら、リフィアはきっと喜んでくれるはずだ」
「そうだな」
飛王は静かに頷くと顔をあげた。
「飛翔、千年後の世界ではどんなことがあったんだ?」
飛翔は飛王と別れてからの出来事を語った。
ドルトムントやフィオナ、ハダル、ジオ、アドラスにバハル、アニスの子孫、シエル達のこと。
そして、 神親王の子孫、 玉英王のこと。
シャクラ砂漠への発掘調査、バンドスの街並み、帆船での航海、イリス島での出来事。
どうやって飛王のからくり箱へ辿り着いたのかを。
飛王のからくり箱の数奇な運命と、 玉英王へ届いた飛王の願いの事も。
「いい人達に巡り合えて良かったな」
飛王はやっと安心できたような声でそう言うと、飛翔の旅に思いを馳せた。
どれほど心細い思いをしたのだろうか。
どれほどの勇気を振り絞って前へ進み続けただろうかと。
だが、飛翔の瞳は満ち足りた思いを宿していた。
「ああ、みんなのお陰さ。一人では到底辿り着けなかった。千年後の人々もとても温かかったよ」
飛王は自分の思いが、時の流れの中で、大切に引き継がれ伝えられていったことに胸が熱くなった。
流花や孝健、沙泉たちたくさんの聖杜の仲間と、その意志をついで千年先まで繋ぎ続けてくれた人々に、深く感謝する。
みんな、助けてくれてありがとう……
「 |聖杜の地が砂漠になっていたとは! あの後神親王はどうなったのだろう?」
「神親王《シェンチンワン》は宝燐山の噴火の時死んでしまったようだけど、『 天空始成紀』と言う本の中では神格化されていたよ」
その言葉に飛王の目がまた丸くなる。
「きっと神親王が死んだら困る人達がいたんだろう。そのせいで、子孫の玉英王は生まれながらに皇帝候補だった。でも、玉英王はいい奴だったぜ。ちょっと瑠月に似ていたな」
「そうなのか! キリトへ向かった瑠月の消息は分かったか?」
「いいや……流花も結局会えなかったらしい」
「そうか……」
二人でしばし、瑠月の無事を願う。
「聖杜……もう一度緑に覆われた地になるといいな」
「そうだな。砂漠が森に還るといいな」
「そうすれば、瑠月が進んだ氷の道にも行きやすくなるかな」
「そうなるといいな」
瑠月と流花が一緒にイリス島に行かれなかったことを、飛王はずっと気にしていたようだった。
寂し気な顔になる。そんな飛王の気持ちを少しでも明るくしたくて、飛翔は別の話題をふる。
「そう言えば、ハダルは飛王に似ていたぞ」
「おお! じゃあ、俺と一緒でいい奴だな」
「自分で言う奴がいるかな。でも、本当にカッコよかったよ。モテモテだけど、一途な恋していたし」
飛王はまるで自分が褒められたかのように、自慢げにニコっとした。
二人で心ゆくまで話し、笑い合った後で、飛王が改めて飛翔に問うた。
「飛翔、お前の見た千年後はどんな世界だった?」
「まだまだ戦争は無くならないし、身分の差も、貧富の差もあった」
「みんな不幸だったのか?」
「そんなことは無い。みんな笑って、歌って、愛して、日々を楽しく過ごそうと頑張っていたよ。時に泣いたり怒ったり苦しんだりするときもあるけど……それでもみんな、その日その日を大切に生きていた。一生懸命生きていたよ」
「そうか」
飛王は飛翔の目を真っ直ぐに見つめて更に問う。
「『知恵の泉』はまだ必要だと思ったか?」
飛翔も飛王の目を逸らさずに、笑顔で答える。
「いいや。いらない。泉なんかなくても、みんな自分の足で立っていたよ」
「じゃあ、結論は出たな」
「ああ」
二人は何の躊躇も無く、星光石の指輪に 星砕剣を重ねた。
そして……
「 破!」
同時に叫んだ。
眩い光が辺りを照らす。
その青白い光の中で、砕け散った星光石の指輪と 星砕剣が、キラキラと舞広がって行った。
神器は砕け散った。
鍵はもう無い。
それがお前たちの答えなのだな。
その時頭の中に、神の声が流れ込んで来た。
温かく慈愛に満ちた声。
「「ああ、これが人の答えだ!」」
二人は一緒に答えた。
おめでとう!
これから始まるのが、本当の人の世界だ!
宇宙の神は満足気にそう言うと、二人を労った。
二人共、ご苦労であった。
『ティアル・ナ・エストレア』の使命は果たされた。
そなたたちの魂は、もう自由だ。
神の言葉を聞いて、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
自由……
それは心を軽くする言葉。
でも……
二人は固く手を繋ぎ合った。
そのまま宇宙を漂う。
「飛翔は 孝健の船に乗ったって言ったよな」
おもむろに飛王が言う。
「孝健の船の更に進化した船だったぜ。凄くカッコ良くて、楽しかった。海も綺麗だったよ」
「いいな。俺も乗りたかったな」
「今度一緒に乗ろう! 生まれ変わった時に」
「そうだな。生まれ変わっても一緒にいたいな」
「生まれ変わったら、絶対一緒に旅しよう」
「ああ、必ず一緒に色々なところへ行こうな」
二人はもう一度、瞳を合わせて誓い合った。
次も一緒に、生まれてこよう……
そして二つの魂は、青い星空に溶けていった。
完
☆お礼とお知らせ☆
この度は、私の拙い作品を読み進めてくださり、ここまで辿り着いてくださってありがとうございました。
当初予定よりも、長く重いお話になってしまったにも関わらず、お付き合いくださった皆様に、感謝の気持ちでいっぱいです。
この物語、ここで『完』を記入したのですが、もう少しだけ『おまけ』の物語を加えてから完結済みにしようと思っています。
本編を読んで、この最後じゃつまらんわ! 回収できてないことまだまだあるじゃないか! ボケ! と思った方 ⇒ おまけも読んでいただけたら嬉しいです(#^.^#)
本編のこのふんわりと終わるのがいいんだよ。なんでもかんでも謎を解き明かせばいいってもんじゃない。読者に想像の余地を残す配慮をせんか! ボケ!
と思われた方 ⇒ このままおまけは読まない方がいいと思います(^^;
と言うわけで、後二話だけ書かせていただきます。
長々とすみません(-_-;)
体を包み込むふわふわとした感覚に、ふと目を開く。
深い藍色が迫り、煌めく無数の光の中を漂っていた。
ここはどこだろう?
まるで星空の海に浮かんでいるようだ。
俺は今、 宇宙にいるのか?
飛王はゆっくりと辺りを見回した。
ここが井戸の中なのか?
飛翔もここを通ったのだろうか?
今もここにいるのだろうか?
飛翔の名を呼んでみる。
飛翔、俺は泉の中だ!
俺は泉でお前を待っているぞ!
だが返事は無かった。
まだ来ていないのかな。
時の輪の先とは、一体どのくらい先にいるのだろう?
待つしか無いんだな……
飛王はそう呟くと、抗い難い眠気に襲われて再び目を閉じた。
長い長い眠りについていたようだった。
目の開け方すら覚束ない感覚に焦りながら、飛王は声のする方へ視線を動かす。
ヒオウ……
飛王!
声が近づくのと同時に、その人物の輪郭もはっきりしてくる。
ああ! 禊祭の服のままだな。
変わらないな。
「飛王! 待たせたな」
人影は滑り込むように、飛王の元へやって来た。
待ちわびた人。
俺の片割れ。
飛王は飛翔を見て微笑んだ。
一瞬でも早くと、手を差し伸べる飛翔の顔にも笑顔が溢れている。
二人はしっかりと手を繋いだ。
「飛王、一人にしてすまなかった」
「飛翔、一人にしてすまなかった」
互いに同じ言葉を言い合って、思わず吹き出す。
「飛翔、お帰り」
「飛王、ただいま」
離れていた空白を埋めるかのように、じっと見つめ合う。
そしてお互いに少しだけ大人びた姿を確認して、誇らしい気持ちになる。
変わらない事なんて……無いんだな。
飛王はそう思うと、飛翔の肩を抱いた。
二人でがっちりと抱き合って、互いの存在を肌で確認した。
「飛翔、お前どこに行っていたんだ?」
「千年後!」
飛王の目がまん丸くなる。
「千年後! 誰も知り合いのいないところで色々苦労したんだろうな。すまなかった。ありがとう」
「飛王こそ、一人で国を守り切ったなんて凄いよ。お前の苦しい日々は全部流花から聞いたよ。踏み留まってくれてありがとう」
「俺は飛翔みたいに一人じゃ無かったよ。みんなが居てくれたから」
その言葉に、飛王の心が如何にみんなに支えられていたかを確信する。
飛翔は胸をなでおろすと同時に嬉しい気持ちになった。
「俺も一人じゃ無かったよ。でも、その話をする前に……飛王、結婚おめでとう! 二人が結婚して、短くても幸せな日々を過ごせたこと、凄く嬉しかったんだ。流花の手紙から二人の熱々な様子が伝わってきたぜ」
飛王の顔が赤くなった。
「もしかして、流花に会えたのか?」
「んな訳ないだろ。千年後だぜ」
飛翔は思わず苦笑する。
「だよな」
飛翔は飛王を思いっきりからかってから、また真剣な表情に戻った。
「流花の手紙はお前が預けてくれた俺のからくり箱の中にあった。千年もの間、アニスの子孫が守り続けてくれていたんだ。お陰で俺は辿り着くことができた」
「そうか……良かった。流花とアニスは無事イリス島に辿り着けたんだな」
飛王の顔が父親の顔になった。
ほっと安堵のため息をつくと、愛おしそうに二人の名を口にする。
その様子を見て、飛翔も温かい気持ちになった。
だが、次の瞬間、飛王の顔が悲しみに歪んだ。
「飛翔、すまない。リフィアを守れなかった。それどころか、リフィアは俺のために命を落とした。本当に申し訳ない」
「飛王、それはお前のせいじゃない。それに、リフィアがお前を助けてくれたお陰で、俺はこうやってお前にまた会えたし、『ティアル・ナ・エストレア』の役目も果たすことができるんだからな。二人で無事使命を果たせたら、リフィアはきっと喜んでくれるはずだ」
「そうだな」
飛王は静かに頷くと顔をあげた。
「飛翔、千年後の世界ではどんなことがあったんだ?」
飛翔は飛王と別れてからの出来事を語った。
ドルトムントやフィオナ、ハダル、ジオ、アドラスにバハル、アニスの子孫、シエル達のこと。
そして、 神親王の子孫、 玉英王のこと。
シャクラ砂漠への発掘調査、バンドスの街並み、帆船での航海、イリス島での出来事。
どうやって飛王のからくり箱へ辿り着いたのかを。
飛王のからくり箱の数奇な運命と、 玉英王へ届いた飛王の願いの事も。
「いい人達に巡り合えて良かったな」
飛王はやっと安心できたような声でそう言うと、飛翔の旅に思いを馳せた。
どれほど心細い思いをしたのだろうか。
どれほどの勇気を振り絞って前へ進み続けただろうかと。
だが、飛翔の瞳は満ち足りた思いを宿していた。
「ああ、みんなのお陰さ。一人では到底辿り着けなかった。千年後の人々もとても温かかったよ」
飛王は自分の思いが、時の流れの中で、大切に引き継がれ伝えられていったことに胸が熱くなった。
流花や孝健、沙泉たちたくさんの聖杜の仲間と、その意志をついで千年先まで繋ぎ続けてくれた人々に、深く感謝する。
みんな、助けてくれてありがとう……
「 |聖杜の地が砂漠になっていたとは! あの後神親王はどうなったのだろう?」
「神親王《シェンチンワン》は宝燐山の噴火の時死んでしまったようだけど、『 天空始成紀』と言う本の中では神格化されていたよ」
その言葉に飛王の目がまた丸くなる。
「きっと神親王が死んだら困る人達がいたんだろう。そのせいで、子孫の玉英王は生まれながらに皇帝候補だった。でも、玉英王はいい奴だったぜ。ちょっと瑠月に似ていたな」
「そうなのか! キリトへ向かった瑠月の消息は分かったか?」
「いいや……流花も結局会えなかったらしい」
「そうか……」
二人でしばし、瑠月の無事を願う。
「聖杜……もう一度緑に覆われた地になるといいな」
「そうだな。砂漠が森に還るといいな」
「そうすれば、瑠月が進んだ氷の道にも行きやすくなるかな」
「そうなるといいな」
瑠月と流花が一緒にイリス島に行かれなかったことを、飛王はずっと気にしていたようだった。
寂し気な顔になる。そんな飛王の気持ちを少しでも明るくしたくて、飛翔は別の話題をふる。
「そう言えば、ハダルは飛王に似ていたぞ」
「おお! じゃあ、俺と一緒でいい奴だな」
「自分で言う奴がいるかな。でも、本当にカッコよかったよ。モテモテだけど、一途な恋していたし」
飛王はまるで自分が褒められたかのように、自慢げにニコっとした。
二人で心ゆくまで話し、笑い合った後で、飛王が改めて飛翔に問うた。
「飛翔、お前の見た千年後はどんな世界だった?」
「まだまだ戦争は無くならないし、身分の差も、貧富の差もあった」
「みんな不幸だったのか?」
「そんなことは無い。みんな笑って、歌って、愛して、日々を楽しく過ごそうと頑張っていたよ。時に泣いたり怒ったり苦しんだりするときもあるけど……それでもみんな、その日その日を大切に生きていた。一生懸命生きていたよ」
「そうか」
飛王は飛翔の目を真っ直ぐに見つめて更に問う。
「『知恵の泉』はまだ必要だと思ったか?」
飛翔も飛王の目を逸らさずに、笑顔で答える。
「いいや。いらない。泉なんかなくても、みんな自分の足で立っていたよ」
「じゃあ、結論は出たな」
「ああ」
二人は何の躊躇も無く、星光石の指輪に 星砕剣を重ねた。
そして……
「 破!」
同時に叫んだ。
眩い光が辺りを照らす。
その青白い光の中で、砕け散った星光石の指輪と 星砕剣が、キラキラと舞広がって行った。
神器は砕け散った。
鍵はもう無い。
それがお前たちの答えなのだな。
その時頭の中に、神の声が流れ込んで来た。
温かく慈愛に満ちた声。
「「ああ、これが人の答えだ!」」
二人は一緒に答えた。
おめでとう!
これから始まるのが、本当の人の世界だ!
宇宙の神は満足気にそう言うと、二人を労った。
二人共、ご苦労であった。
『ティアル・ナ・エストレア』の使命は果たされた。
そなたたちの魂は、もう自由だ。
神の言葉を聞いて、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
自由……
それは心を軽くする言葉。
でも……
二人は固く手を繋ぎ合った。
そのまま宇宙を漂う。
「飛翔は 孝健の船に乗ったって言ったよな」
おもむろに飛王が言う。
「孝健の船の更に進化した船だったぜ。凄くカッコ良くて、楽しかった。海も綺麗だったよ」
「いいな。俺も乗りたかったな」
「今度一緒に乗ろう! 生まれ変わった時に」
「そうだな。生まれ変わっても一緒にいたいな」
「生まれ変わったら、絶対一緒に旅しよう」
「ああ、必ず一緒に色々なところへ行こうな」
二人はもう一度、瞳を合わせて誓い合った。
次も一緒に、生まれてこよう……
そして二つの魂は、青い星空に溶けていった。
完
☆お礼とお知らせ☆
この度は、私の拙い作品を読み進めてくださり、ここまで辿り着いてくださってありがとうございました。
当初予定よりも、長く重いお話になってしまったにも関わらず、お付き合いくださった皆様に、感謝の気持ちでいっぱいです。
この物語、ここで『完』を記入したのですが、もう少しだけ『おまけ』の物語を加えてから完結済みにしようと思っています。
本編を読んで、この最後じゃつまらんわ! 回収できてないことまだまだあるじゃないか! ボケ! と思った方 ⇒ おまけも読んでいただけたら嬉しいです(#^.^#)
本編のこのふんわりと終わるのがいいんだよ。なんでもかんでも謎を解き明かせばいいってもんじゃない。読者に想像の余地を残す配慮をせんか! ボケ!
と思われた方 ⇒ このままおまけは読まない方がいいと思います(^^;
と言うわけで、後二話だけ書かせていただきます。
長々とすみません(-_-;)
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