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第六章 古の泉
第57話 白花散る
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「待てい!」
その時、腹の底からの大一括が響き渡った。
入り口に、翠生翁が立っている。片手にはなぜか火を灯した蝋燭を持っていた。
「みんな騒がしいな。わしの弟子と友が人質になっていると聞いて助けに来た」
「ご老体は黙っていていただきたい」
開項が血走らせた目を向けると、
「老体に鞭打ってきたんじゃ。そんな邪険にすることもなかろうて」
そう言いながら翠生翁が懐から取り出したのは、黒い筒状の物。
「お前たちはこれが何か知っているか?」
「?」
「それは!」
グリフィスが驚愕の表情を見せた。
「翠生翁、一体どこからそれを!」
「お前さんの実験室からだよ、火薬を詰めた筒さ! と言ってもただの火薬じゃないぞ。燃焼速度、破壊力が格段に高くなっている危険な筒だよ。グリフィスは『爆薬』と呼んでいたな」
皆の表情に緊張が走った。
「さて、お前たちがこれから動くと言ったら、わしはこれに火をつける。一体どれほどの威力があるかわからないが、この議事堂が吹っ飛ぶかもしれないな」
「そんな武器をどうやって手に入れたのですか!」
斉覚の声に、翠生翁はグリフィスへ視線を向けながら話始めた。
「こいつはこんな危険な物を発明したから、キリトにいられなくなったんだ。そしてこの国に身を寄せた。本来ならこの武器を持ってどこへでも売り込みに行けば、しこたま儲けられただろうにな」
だが、それをしなかった。
でも、これを持ち続けた。
「お前たちは、グリフィスの気持ちが分かるか? なぜこんな危険な物を持ち続けていたのか? 彼にとっては、妻を奪い、自分の名誉も富も奪って、この地に逃れてくる原因となった憎むべき発明品を、なぜ持ち続けていたのか?」
翠生翁はぐるりと皆を見回した。
「それは、いざと言う時、この聖杜を守りたいと思ったからだ。逃亡者となった自分達を受け入れ、保護してくれた国へのせめてものお礼にな。そして彰徳王もその好意を受け取った。この兵器を隠し持って、いざと言う時は、自らがこれを用いてみんなを守ろうと考えていたんだ。軍隊を持たなくていいと言っていたのは、この力を手に入れていたからだ」
二人の宰相は呆然としていたが、ならばなぜ自分達にもそれを教えてくれなかったのかと迫った。
「なぜ我々を信用して打ち明けてくれなかったのです! それが分かっていれば、我々も無用な心配などせずにいられたものを!」
「そうだな。確かに彰徳王も悪いな。みんなにちゃんと話しておけばよかったのは確かだ。だがな、人殺しの道具を持っていると言うことは、幸せか? 人を殺すのは幸せか? 違うよな。彰徳王は、誰にもこの苦しみを味わってほしくなかったんだ。純粋な気持ちで、みんなに人殺しの片棒を担がせたいと思わなかっただけだと思うぞ」
その場の誰もが、静かにその言葉を聞いていた。
「それに、知っている人が増えるという事は、この技術が外部に漏れてしまう危険が高まることにもなりかねない。もしまたどこかの国がこの技術に目をつけたら、それこそとんでも無い大量殺戮が行われてしまうだろう。そんな危険を避けるためにも、一人で抱えているしかなかったんだろうな」
その翠生翁の言葉は、その場のみんなの心にも、深く届いたようだった。
飛王は改めて、父、彰徳王の偉大さを感じた。
まだまだ父上のような王になるのは遠いな。
開項と斉覚の剣先が深く地面へと沈みこむのを見て、翠生翁もほっとしたように蝋燭の火を吹き消した。
一触即発だった雰囲気が和らぎ、事態が最悪にならずに済んだことは、本当に良かったと胸を撫でおろした時だった。
それまで横に控えて飛王を守っていた瑠月が、開項と斉覚の剣を受け取りに動いたその刹那……
『対話の間』の窓の外から、一矢が放たれた。
中の様子に気づかずに放たれたのであろうその矢は、人々の騒めきと安堵の空気に紛れて、真っ直ぐに、飛王の背後まで迫って来た。
長年、父王を支えてきた宰相たちとの悲しい行き違いに打ちのめされていた飛王は、そのために、一瞬気づくのが遅れた。
空気を切り裂く気配を感じて振り向いた飛王の目には、既に胸元まで迫った矢先しか見えなかった。
間に合わない!
そう思った瞬間、飛王は細い腕に付き飛ばされた。
「リフィア! リフィア! リフィア!」
飛王が呼びかけ続ける。
胸を貫く矢を抜きかけたが、慌てて自らの服を切り裂き傷口を押さえ、止血を始めた。
「飛王……無事? 良かっ……た」
リフィアは力ない瞳で飛王を捉えると、ほっとしたように笑みを浮かべた。
「それ以上しゃべるな。大丈夫だ。必ず助ける。だから気をしっかり持て!」
飛王は半狂乱になりながら、必死でかき抱いた。
傷口から溢れ出る血は、飛王の体も真っ赤に染め上げていく。
飛王を突き飛ばしたリフィアの胸を、思念のこもった矢が静かに貫いていた。
それは、飛王さえ殺せば、聖杜に新しい時代が始まると信じて放った偲斎の一矢だった。一人の犠牲で済むなら……そう自分自身に言い聞かせて弓を引いた。
今まで偲斎は父、開項の命を受けて、たくさんの天空国の密偵の命を狩ってきた。
それは、聖杜の民の平和のために大切なことだと思ってきたし、自分さえ使命に徹すれば多くの人が助かるのだと思えばこそ、人の命を奪うことへの罪悪感に蓋をしてきたのだった。
だから、この間殺めた真成も、今回の飛王も、手に掛ける理由があると自身に言い聞かせていた。
そんな思いのこもった矢は音も無く近づき、標的を射抜いたはずだった……
だが、違った。
射抜いたのは、聖杜の民。
武器ももたないか弱い人。
偲斎の心はその瞬間、粉々に砕け飛んだ。
リフィアを射抜いた矢は、偲斎の心をも壊した。
弓を抱えたまま、その場に呆然と立ち尽くしていた偲斎は、逃げることもなく、そのまま捕縛されたのだった。
飛王の腕の中で微かな息を繰り返していたリフィアは、飛王を見上げて囁いた。
「わたしは……大丈夫よ。だから……飛王は心配しないで。何も心配しなく……ていいのよ」
飛王の悲痛な瞳がリフィアの瞳と重なる。
リフィアは安心させるように、飛王を優しく見つめ続ける。
その時、ゴフッと咳き込んで、リフィアの口から血が流れ出た。
「頼む。それ以上しゃべるな」
飛王は必死に懇願した。
縄を解かれて駆けつけたグリフィスが、涙を流しながらリフィアの名を呼ぶ。
「リフィア! リフィア、すまない。私があんなものを発明したばかりに、お前には苦労ばかりかけてしまった。たくさん辛い思いをさせてしまった……」
リフィアは目だけでグリフィスを追うと、小さな声で言った。
「パパ……それは違うわ。ここに来れて幸せだった……みんなに会えて幸せだったのよ。全然辛く……無かったし、毎日楽しかっ……たんだから」
言葉の最後は絶え絶えになった息に乗せて紡がれる。
グリフィスがリフィアの頬を撫で、リフィアの瞳が嬉しそうに煌めいた。
リフィアは味わうように、ゆっくりと息を吸った。
頭の中に様々な思いが蘇る。
美しい聖杜の風景。
大好きな人々。
楽しかった思い出。
飛翔……ごめんね。あなたを待っていたかったけど、先に行っているわ。
でも、飛王が無事だったから良かったでしょ。
もしも生まれ変われるのなら、今度はもう少し、自分の気持ちを正直に話せるようになりたいな。
もっと、明るくておしゃべりで、おてんばな女の子になって、
飛翔に、ちゃんと好きだって言いたいな。
リフィアはふわっと微笑むと、最後にもう一度、飛王の瞳を見つめた。
飛王、あなたの気持ち、分かっていたのに、何も答えてあげられなくてごめんね。
あなたのことも大好きだけど、飛翔と同じ気持ちでは無かった。
でも、あなたのことを一番に思っている流花がいるわ。
いつか、その気持ちに気づいてくれたらいいな。
そんな都合のいい事考えたらいけないのかな。
リフィアは最後の力を振り絞って、手を伸ばす。
そっと、飛王の頬に触れた。
大丈夫よ!
唇がそう動いた後、その手は滑り落ちた。
急に重みを増したリフィアの体を抱えて、飛王は涙も流せずに呆然と座り込んでいた。
リフィアが逝ってしまった……
涙は出なかった。
枯れ果ててしまったと言ったほうが正しかった。
飛王が寝室へ戻って来れたのは、事件から何日も後の事になる。
ようやく、暫しの休息を得た飛王は、飛翔の布団にもぐりこんだ。
身を縮めて、小さくなる。
存在を消してしまいたいくらい、小さく小さく丸まる。
飛翔!
リフィアが逝ってしまった……
俺の目の前から消えてしまった。
俺を庇って死んでしまった。
俺はどうしたらいい?
すまない……俺のせいだ。
もう、お前とリフィアを会わせてやれなくなってしまった……
飛翔……飛翔、飛翔飛翔!
会いたい!
会いたい……
そうしてずっと震えながら、眠ることもできずに横たわっていた。
その時、腹の底からの大一括が響き渡った。
入り口に、翠生翁が立っている。片手にはなぜか火を灯した蝋燭を持っていた。
「みんな騒がしいな。わしの弟子と友が人質になっていると聞いて助けに来た」
「ご老体は黙っていていただきたい」
開項が血走らせた目を向けると、
「老体に鞭打ってきたんじゃ。そんな邪険にすることもなかろうて」
そう言いながら翠生翁が懐から取り出したのは、黒い筒状の物。
「お前たちはこれが何か知っているか?」
「?」
「それは!」
グリフィスが驚愕の表情を見せた。
「翠生翁、一体どこからそれを!」
「お前さんの実験室からだよ、火薬を詰めた筒さ! と言ってもただの火薬じゃないぞ。燃焼速度、破壊力が格段に高くなっている危険な筒だよ。グリフィスは『爆薬』と呼んでいたな」
皆の表情に緊張が走った。
「さて、お前たちがこれから動くと言ったら、わしはこれに火をつける。一体どれほどの威力があるかわからないが、この議事堂が吹っ飛ぶかもしれないな」
「そんな武器をどうやって手に入れたのですか!」
斉覚の声に、翠生翁はグリフィスへ視線を向けながら話始めた。
「こいつはこんな危険な物を発明したから、キリトにいられなくなったんだ。そしてこの国に身を寄せた。本来ならこの武器を持ってどこへでも売り込みに行けば、しこたま儲けられただろうにな」
だが、それをしなかった。
でも、これを持ち続けた。
「お前たちは、グリフィスの気持ちが分かるか? なぜこんな危険な物を持ち続けていたのか? 彼にとっては、妻を奪い、自分の名誉も富も奪って、この地に逃れてくる原因となった憎むべき発明品を、なぜ持ち続けていたのか?」
翠生翁はぐるりと皆を見回した。
「それは、いざと言う時、この聖杜を守りたいと思ったからだ。逃亡者となった自分達を受け入れ、保護してくれた国へのせめてものお礼にな。そして彰徳王もその好意を受け取った。この兵器を隠し持って、いざと言う時は、自らがこれを用いてみんなを守ろうと考えていたんだ。軍隊を持たなくていいと言っていたのは、この力を手に入れていたからだ」
二人の宰相は呆然としていたが、ならばなぜ自分達にもそれを教えてくれなかったのかと迫った。
「なぜ我々を信用して打ち明けてくれなかったのです! それが分かっていれば、我々も無用な心配などせずにいられたものを!」
「そうだな。確かに彰徳王も悪いな。みんなにちゃんと話しておけばよかったのは確かだ。だがな、人殺しの道具を持っていると言うことは、幸せか? 人を殺すのは幸せか? 違うよな。彰徳王は、誰にもこの苦しみを味わってほしくなかったんだ。純粋な気持ちで、みんなに人殺しの片棒を担がせたいと思わなかっただけだと思うぞ」
その場の誰もが、静かにその言葉を聞いていた。
「それに、知っている人が増えるという事は、この技術が外部に漏れてしまう危険が高まることにもなりかねない。もしまたどこかの国がこの技術に目をつけたら、それこそとんでも無い大量殺戮が行われてしまうだろう。そんな危険を避けるためにも、一人で抱えているしかなかったんだろうな」
その翠生翁の言葉は、その場のみんなの心にも、深く届いたようだった。
飛王は改めて、父、彰徳王の偉大さを感じた。
まだまだ父上のような王になるのは遠いな。
開項と斉覚の剣先が深く地面へと沈みこむのを見て、翠生翁もほっとしたように蝋燭の火を吹き消した。
一触即発だった雰囲気が和らぎ、事態が最悪にならずに済んだことは、本当に良かったと胸を撫でおろした時だった。
それまで横に控えて飛王を守っていた瑠月が、開項と斉覚の剣を受け取りに動いたその刹那……
『対話の間』の窓の外から、一矢が放たれた。
中の様子に気づかずに放たれたのであろうその矢は、人々の騒めきと安堵の空気に紛れて、真っ直ぐに、飛王の背後まで迫って来た。
長年、父王を支えてきた宰相たちとの悲しい行き違いに打ちのめされていた飛王は、そのために、一瞬気づくのが遅れた。
空気を切り裂く気配を感じて振り向いた飛王の目には、既に胸元まで迫った矢先しか見えなかった。
間に合わない!
そう思った瞬間、飛王は細い腕に付き飛ばされた。
「リフィア! リフィア! リフィア!」
飛王が呼びかけ続ける。
胸を貫く矢を抜きかけたが、慌てて自らの服を切り裂き傷口を押さえ、止血を始めた。
「飛王……無事? 良かっ……た」
リフィアは力ない瞳で飛王を捉えると、ほっとしたように笑みを浮かべた。
「それ以上しゃべるな。大丈夫だ。必ず助ける。だから気をしっかり持て!」
飛王は半狂乱になりながら、必死でかき抱いた。
傷口から溢れ出る血は、飛王の体も真っ赤に染め上げていく。
飛王を突き飛ばしたリフィアの胸を、思念のこもった矢が静かに貫いていた。
それは、飛王さえ殺せば、聖杜に新しい時代が始まると信じて放った偲斎の一矢だった。一人の犠牲で済むなら……そう自分自身に言い聞かせて弓を引いた。
今まで偲斎は父、開項の命を受けて、たくさんの天空国の密偵の命を狩ってきた。
それは、聖杜の民の平和のために大切なことだと思ってきたし、自分さえ使命に徹すれば多くの人が助かるのだと思えばこそ、人の命を奪うことへの罪悪感に蓋をしてきたのだった。
だから、この間殺めた真成も、今回の飛王も、手に掛ける理由があると自身に言い聞かせていた。
そんな思いのこもった矢は音も無く近づき、標的を射抜いたはずだった……
だが、違った。
射抜いたのは、聖杜の民。
武器ももたないか弱い人。
偲斎の心はその瞬間、粉々に砕け飛んだ。
リフィアを射抜いた矢は、偲斎の心をも壊した。
弓を抱えたまま、その場に呆然と立ち尽くしていた偲斎は、逃げることもなく、そのまま捕縛されたのだった。
飛王の腕の中で微かな息を繰り返していたリフィアは、飛王を見上げて囁いた。
「わたしは……大丈夫よ。だから……飛王は心配しないで。何も心配しなく……ていいのよ」
飛王の悲痛な瞳がリフィアの瞳と重なる。
リフィアは安心させるように、飛王を優しく見つめ続ける。
その時、ゴフッと咳き込んで、リフィアの口から血が流れ出た。
「頼む。それ以上しゃべるな」
飛王は必死に懇願した。
縄を解かれて駆けつけたグリフィスが、涙を流しながらリフィアの名を呼ぶ。
「リフィア! リフィア、すまない。私があんなものを発明したばかりに、お前には苦労ばかりかけてしまった。たくさん辛い思いをさせてしまった……」
リフィアは目だけでグリフィスを追うと、小さな声で言った。
「パパ……それは違うわ。ここに来れて幸せだった……みんなに会えて幸せだったのよ。全然辛く……無かったし、毎日楽しかっ……たんだから」
言葉の最後は絶え絶えになった息に乗せて紡がれる。
グリフィスがリフィアの頬を撫で、リフィアの瞳が嬉しそうに煌めいた。
リフィアは味わうように、ゆっくりと息を吸った。
頭の中に様々な思いが蘇る。
美しい聖杜の風景。
大好きな人々。
楽しかった思い出。
飛翔……ごめんね。あなたを待っていたかったけど、先に行っているわ。
でも、飛王が無事だったから良かったでしょ。
もしも生まれ変われるのなら、今度はもう少し、自分の気持ちを正直に話せるようになりたいな。
もっと、明るくておしゃべりで、おてんばな女の子になって、
飛翔に、ちゃんと好きだって言いたいな。
リフィアはふわっと微笑むと、最後にもう一度、飛王の瞳を見つめた。
飛王、あなたの気持ち、分かっていたのに、何も答えてあげられなくてごめんね。
あなたのことも大好きだけど、飛翔と同じ気持ちでは無かった。
でも、あなたのことを一番に思っている流花がいるわ。
いつか、その気持ちに気づいてくれたらいいな。
そんな都合のいい事考えたらいけないのかな。
リフィアは最後の力を振り絞って、手を伸ばす。
そっと、飛王の頬に触れた。
大丈夫よ!
唇がそう動いた後、その手は滑り落ちた。
急に重みを増したリフィアの体を抱えて、飛王は涙も流せずに呆然と座り込んでいた。
リフィアが逝ってしまった……
涙は出なかった。
枯れ果ててしまったと言ったほうが正しかった。
飛王が寝室へ戻って来れたのは、事件から何日も後の事になる。
ようやく、暫しの休息を得た飛王は、飛翔の布団にもぐりこんだ。
身を縮めて、小さくなる。
存在を消してしまいたいくらい、小さく小さく丸まる。
飛翔!
リフィアが逝ってしまった……
俺の目の前から消えてしまった。
俺を庇って死んでしまった。
俺はどうしたらいい?
すまない……俺のせいだ。
もう、お前とリフィアを会わせてやれなくなってしまった……
飛翔……飛翔、飛翔飛翔!
会いたい!
会いたい……
そうしてずっと震えながら、眠ることもできずに横たわっていた。
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