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卒業

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卒業旅行…速攻終わったわと
土日も特に何もせず、卒業式の朝。

山田「はぁ、ラストイベントか」

卒業旅行で、赤沢君に服ダサいと言われた事以外
何もなく、本当このまま何事も無く
今日が終わりそうだなと、
イケメンと触れ合ったこの数ヶ月は、
もはや、夢だったんじゃ無いかと思っている。

山田「そうか、夢オチか」

私は制服を着て家を出た。



行きの電車
特に何も無し!

校門前
特に何も無し!

卒業式会場への移動
特に何も無し!

卒業式開始、卒業証書授与、何か諸々…
特に何も無しッ!

山田「呆気ないな、これで卒業か」

関田「部活の後輩達が呼んでるわよ!」

山田「我が後輩達よ!」

悠里に呼ばれ、後輩達との最後の交流をし、
いよいよ、高校最後の下校前。

卒業する他の同級生達と写真や、
会話をしたりしながら、伊野君達を探すが
当たり前だが、後輩女子に囲まれている。

平井「一軍一軍」

山田「ですよねー」

まっこんな感じだなと、
私は最後に美術室でも行くかと悠里達と別れ
校舎に戻った。



山田「…あぁ」

私は美術室の窓枠を手で摩る。

山田「ここが始まりの場所」

今日でお別れなのに清々しい程、何も無く
卒業式では泣かなかったのに、今泣きそうだ。

山田「ここで伊野さんと…」

伊野「そん時は特に何も無かったでしょ」

山田「そう…ただ、私が認識されていた事に
驚い…た」

幻聴か?

山田「…いやいや、幻聴幻聴」

伊野「幻聴じゃないよ」

ポンと頭を叩かれ、
私は振り向くと、伊野君がいた。

山田「ウギャッ」

伊野「飛沫凄いな!」

伊野君は自分の顔を拭きながら、笑っている。

伊野「そんな驚くとは思わなかった」

山田「なッ何故⁉︎」

伊野「何故って、最後だし
山田さんに会いたかったからだよ」

山田「うわぁッ!
今のボイスレコーダーに録っていいですか!」

私は震える手で勢いのまま、スマホを出そうと
ポケットに手を突っ込むとその手を掴まれた。

伊野「駄目」

山田「だっ…」

伊野「最後は、そういうの無し」

山田「勿体無い!」

伊野「駄目」

山田「最後だからこそ、想い出作りを!」

伊野「自分だけじゃずるいでしょ?
俺から先に山田さんとの想い出作らせてよ」

伊野君の手が私の頬を撫でる。

伊野「いいよね?」

伊野君の顔が目の前にある。

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドドドドドドドドッ

伊野「なーんちゃって、萌えた?」

伊野君は笑い、私は膝から崩れ落ち
口が大きく開いた。

山田「ぎゃぁぁあぁぁあああッ」

伊野「うわ⁈」

ガラッ

柏木「廊下まで叫び声がって、山田⁈」

赤沢「うるさ過ぎでしょ、
弘樹ソイツに何した訳」

山田「ぎゃぁぁあぁぁあああッ」

伊野「落ち着いて!
俺が悪かったから!」

伊野君に口を抑えられ、
雄叫びを止めた。

伊野「俺がふざけたら叫んじゃって」

柏木「おい!白目剥いてんぞ」

伊野「あーここまでとは、
本当ごめん!山田さん」

赤沢「高校最後に白目剥いて叫ぶとか、
流石変態だわ」

美術室に伊野君、赤沢君、柏木君の3人が
集結し刺激強過ぎだと、
やっぱり調子に乗るもんじゃ無かった。

伊野「本当、ごめん!」

赤沢「げっ、よだれ垂らしてる
まじで汚いんだけど」

柏木「山田、このタオルやるから
よだれ拭けよ」

柏木君は私のよだれを拭いてくれる。

山田「もう無理ッ…勘弁して!
限度が過ぎるッ」

柏木「限度?」

山田「優しくしないで!」

柏木「そんなよだれ垂れ流してたら拭くだろ、
だって、俺達友達だもんな!」

ニカッと、こんな笑顔見た事ないよと
神々しくて目が焼け落ちる。

山田「止めて!
畳み掛けないで!」

赤沢「コイツなんて、どうでもいいじゃん。
せっきー達店に着いたってさ、早く行こう」

山田「安定のツンデレッ!」

赤沢「今の発言のどこにデレがあんだよ。
まじで、キモいな」

山田「罵倒ありがとうございます!」

伊野「あはははッ
ここぞとばかりに問題発言!」

伊野君は私の頭をまたポンポンと叩く。

伊野「山田さんのお陰で高校最後、
刺激的だったよ」

山田「ぎゃッ」

伊野「叫ばない叫ばない!」

山田「むぐッ」

伊野「こんな女子いるとは思わなかった」

赤沢「いや、女子じゃなくて変態な」

伊野「そうそう、変態女子だったな」

柏木「まぁ、変態も個性か」

赤沢「個性じゃなくて、性癖でしょ」

伊野「とにかく、ありがとう」

伊野君が微笑んだ。
そして、私は叫んだ。

これが私の高校最後の想い出。



それから、2ヶ月後

赤沢「何でいんの?」

私のキャンパスライフに伊野君達がいた。

柏木「同じ大学だったのか!」

伊野「それなら、コレからもよろしく!」
















バシッ

赤沢「おい妄想してんな」

赤沢君に肩パンされ、現実に引き戻された。

柏木「妄想してたのか?」

山田「はッ」

赤沢「はッじゃない、
どうせ、大学一緒的な妄想でしょ?
普通に違うから、卒業を機に再会とか無いから」

赤沢君は、私の事を理解しフラグを折った。

赤沢「つか、かっしー見た?
コイツの卒業旅行の服装ヤバかったよ」

そして、私の心を抉ってくる。

柏木「あー衝撃走ったな」

山田「そっそんなに」

柏木「友達の俺でも、引いたぞ」

山田「…うぅ」

私を最後の最後まで友達と言ってくれる天使の
柏木君ですら、苦笑いをしている。

伊野「本当、改めて2人と
仲良くなっちゃったよな」

赤沢「これのどこが仲良いように見える訳」

柏木「俺は友達だから、仲良いけど
赤沢は違うだろ、泣かしてたし」

伊野「確かに、結局アレなんだったんだ?」

そこ掘り起こすのかと、
まぁ最後だし、身分違いで泣いた延長で
赤沢君がデレたと話す。

伊野「なーんだ、やっぱ良は
山田さんの事、大好きなんじゃん」

柏木「やっぱり、そうなのか?」

赤沢「やっぱりって、冗談でも
笑えないんだけど」

山田「へへ」

赤沢「お前は笑うな!」

ベシッ

山田「あでッ」

赤沢君にまた肩パンされた。

柏木「赤沢、女子に手出すな」

赤沢「かっしー、コイツの事
女子認識してないんじゃなかったっけ?」

柏木「俺にとっては、山田は友達で
今までの大嫌いな女子じゃない」

伊野「真那人も、山田さんみたいに
よく分からない理論言ってんな」

赤沢「あーあ、この変態のせいで
かっしーが汚染されたわ」

柏木「汚染されてねーよ」

この美術室という密室に
この3人と最後との時を過ごしてるんだなと
そもそも、関尾君達を待たせてて私なんかと
こんな素敵な時を…

山田「い…伊野さん」

伊野「…」

山田「あれ…伊野さん」

伊野「…」

山田「伊野さ…」

伊野「何で俺だけさん付けのまま?
良も真那人も君付けじゃん」

柏木「確かに、伊野だけ距離あるな」

赤沢「いや、君付けとさん付けの違いで
距離近いとか無いでしょ」

山田「…心では君付けですよ…でも、対面すると
えと、伊野さんはなんというか」

柏木「特別なんだろ」

山田「そうですね」

伊野「え?」

山田「赤沢君と柏木君は、友達ですけど…
伊野さんは友達って感じじゃなくて」

赤沢「ちょっと、聞き捨てならないんだけど
なんで俺を友達認識してんの?」

柏木「赤沢、黙っとけ」

伊野「友達じゃないなら、何?」

伊野君は首を傾げている。

山田「…神的な」

伊野「なんでやねん」

柏木「恋愛モノじゃないからな」

赤沢「コイツと恋愛とか、根本的に無理でしょ。
生贄じゃん」

イケメン3人が私の事を見ている。
こんな奇跡、一生起こらないだろう…

山田「写真撮っていいですか」

赤沢「盗撮とかキモ」

山田「決して、盗撮では…
お願いしてるんですよ」

柏木「写真くらいいいだろ」

赤沢「変態と同じ画角に収まるとか
無理だわ」

伊野「俺も」

山田「伊野さん⁈」

伊野「俺の事、神とか言ってる変態とは嫌だな~」

山田「いや、そもそも私は撮るだけで
映らないですよ!」

柏木「何でだよ!入れよ」

山田「イケメン3人の写真は家宝!
不純物は要らない!」

私はハイアングルからイケメン達を撮ろうと、
テーブルに登る。

ガタンッ

柏木「あっ!」

テーブルの足が折れ、私は床に転げ落ちた。

あぁ…伊野君との出会い同様…いや、
今は3人もイケメンが居る。

伊野「なんか、デジャブ」

伊野君は笑い、赤沢君はため息を吐き、
柏木君は慌てた顔をした。

やっぱ、イケメンはローアングルでもイケメンだな。
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